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242. クレア・キーガン 青い野を歩く

クレア・キーガンは、アイルランドの女性作家である。「青い野を歩く」(2007-2008)は、同名の作品集に収録の一篇。易しく淡々と語られる物語であるが、とても心にしみる。
とても読み易い。どれも平易でリズム感もあるからか。あっというまに八つの短編を読み終えてしまう。テーマも明瞭だ。描かれているのは、アイルランドの田舎、封建的な因習の残る世界の中で押し潰されそうな人間の心の動き。荒涼とした土地で暮ら す人間たちの黙々と生きる姿を描くというアイルランド文学の定番を踏まえたうえで、なにやらクールに物語を綴っている。

神父は靴下を見つけ、外に出て靴を履く。青い夜が野の上に暗く広がる。彼は木の門を押し開け、背後で閉まる音に耳を澄ませる。そして、その場に立って世界を眺める。春が来た。乾いて、期待に満ちている。ハンノキが芽吹いて、青ざめた大枝を真鍮で覆うあらゆるものが、より鮮やかに見える。夜がフェンスの杭を包む。草かきは輝き、よく愛されて、使いこまれている。
神はどこにいるのか、と彼は問うた。今夜、神はその問いに答える。あたりの空気は野生のアカスグリの茂みの独特の香りに満ちている。一頭の子羊が深い眠りから目覚め、青い野を横切る。頭上では、星が転がって位置におさまる。神は、この自然だ。(岩本正恵訳)


・・・主人公の神父が、ここで見るのは、”青い野”でなくてはならない。暗く広がる青い夜の野でなくてはならないのである。
わかりやすい、読みやすい、だから あっというまに読めてしまう。
なのに、ああいい本だったおしまい、とすぐに片付けてしまうことにならないのは、なにか物語の底に流れる作家の冷たい視点が感じられるからだ。だから、心に しみる。もういちど読み返してみたくなる。女性作家の視点は、意地悪だなといってみたくなる。押し潰されそうなこころではなくて、すでに潰されてしまっ たり冷えついてしまったり凍り付いてそして割れてしまったりしたこころにふれたような気がして、こちらも凍えてしまいそうになるのである。

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