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246. 泉鏡花 天守物語

「天守物語」(1917)は、鏡花、44歳の作品。十八番の妖異譚。生前は、上演されることのなかった戯曲である。引用部は、物語の冒頭、姫路城の天守に住む富姫が、折しも語りだすところ。

その雨を頼みに行きました。  今日はね、この姫路の城・・・ここから視れば長屋だが、・・・長屋の主人、それ、播磨の守が、秋の野山へ鷹狩に、大勢で出掛けました。皆知っておいでだろう。空は高し、渡鳥、色鳥の鳴く音は嬉しいが、田畑と言わず駈廻って、きゃっきゃっと飛騒ぐ、知行とりども人間の大声は騒がしい。まだ、それも鷹ばかりなら我慢もする。近頃は不作法な、弓矢、鉄砲で荒立つから、うるささもうるさしさ。何よりお前、私のお客、この大空の霧を渡って輿でおいでのお亀様にも、途中失礼だと思ったから、雨風と、はたた神で、鷹狩の行列を追崩す。  あの、それを、夜叉ヶ池のお雪様にお頼み申しに参ったのだよ。(中略)
私はね、群鷺ヶ峰の山の端に、掛稲を楯にして、戻道で、そっと立って、視めていた。そこには昼の月があって、雁金のように(その水色の袖を圧う)その袖に影が映った。影が、結んだ玉ずさのようにも見えた。  夜叉ヶ池のお雪様は、激いなかにお床しい、野はその黒雲、尾上は瑠璃、皆、あの方のお計らい。それでも鷹狩の足も腰も留めさせずに、大風と大雨で、城まで追返しておくれの約束。鷹狩たちが遠くから、松を離れて、その曠野を、黒雲の走る下に、泥川のように流れてくるに従って、追手の風の横吹。私が見ていたあたりへも、一村雨颯とかかったから、歌も読まずに蓑をかりて、案山子の笠をさして来ました。ああ、そこの蜻蛉と鬼灯たち、小児に持たして後ほどに返しましょう。


この流れるような文章に打ちのめされないものがいるだろうか。おまけにこれは戯曲であるのだから、役者の声で朗々と読み上げられでもしたら、陶然とするか気絶してしまうのか。




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