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☆ 露草

徳富蘆花曰く、”花では無い、あれは色に出た露の精である”。


18542.Commelinaceae - Commelina coelestis
 (画像;Robert Sweet、『The British Flower Garden』(1823-29)


然しながら碧色の草花の中で、彼はつゆ草の其れに優(ま)した美しい碧色を知らぬ。つゆ草、又の名はつき草、蛍草、鴨跖草なぞ云って、草姿は見るに足らず、唯二弁より成る花は、全き花と云うよりも、いたずら子に毟られたあまりの花の断片か、小さな小さな碧色の蝶の唯かりそめに草にとまったかとも思われる。寿命も短くて、本当に露の間である。然も金粉を浮べた花蕊の黄に映発して惜気もなく咲き出でた花の透き徹る様な鮮やかな純碧色は、何ものも比ぶべきものがないかと思うまでに美しい。
つゆ草を花と思うは誤りである。花では無い、あれは色に出た露の精である。姿脆く命短く色美しい其面影は、人の地に見る刹那の天の消息でなければならぬ。里のはずれ、耳無地蔵の足下などに、さまざまの他の無名草、醜草まじり朝露を浴びて眼がさむる様に咲いたつゆ草の花を見れば、竜胆を讃めた詩人の言を此にも仮りて、青空の気、滴り落ちて露となり露色に出てこゝに青空を地に甦らせるつゆ草よ、地に咲く天の花よと讃えずには居られぬ。「ガリラヤ人よ、何ぞ天を仰いで立つや。」吾等は兎角青空ばかり眺めて、足もとに咲くつゆ草をつい知らぬ間に蹂みにじる。碧色の草花として、つゆ草は粋である。
(徳富蘆花、碧色の花、1913)



けだし、名言であると思う。なんて言いながら、いつも歩く堤防の道で、わたしもどれだけの露草を知らぬまに蹂みにじってきたことか。ああ我らはとかく青空ばかり眺めたがる。


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