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252. シュペルヴィエル 空のふたり

「空のふたり」は、短編集『海に住む少女』(1931)のなかの一篇。
彼が繰り返し書いた、死後の世界についての物語のひとつである。

デルソルは彼女に鞄をもちましょうかと声をかけました。マルグリットは笑いましたが、彼はしごく真面目に言っていたのです。
彼女は、彼の申し出を少々滑稽に思いました。もう死んでからずいぶんたつ、天上の世界でも経験を積んだ学生からそんなことを言われるなんて、ますます滑稽だとは思ったのですが、それでも、鞄ごと彼に手渡すことにしました。
しかし、鞄を手にした瞬間、シャルルは腕に重みを感じたのです。かつて手だった部分に、何だか活力がわいてきました。(中略)手首がずきりと痛みました。その瞬間、鞄が手からこぼれおち、ずっしり重たいキシュラやゲルザーの辞書がページをひらひらさせながら、鞄から飛び出してしまいました。
驚いたマルグリットはまばたきをしました。地上の女の子がもつ本物の睫毛が、ぱちくりします。まだ顔の大部分は命がないままでしたが、目だけはかつてのような青い色に戻っていました。
(永田千奈訳)


訳者によれば、早くに両親を亡くし、自身も病弱であったシュペルヴィエルにとって、死は常に身近にあるものだったという。それは生の対極にあるものではなく、もっと曖昧で中途半端な世界であったとも。・・・そんな注釈はともかく、いつもながらシュペルヴィエルの物語は、美しくて残酷である。美しさに酔ったような気分になるのは、きっと一瞬で、ほんとうはこころの芯の部分が冷え切ってしまってるのに気がつく。冷えた手なら擦り合わせればすぐに暖かくなるが、こころの方はそうはいかない。さだめし、冬には不向きの物語か。


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