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253. 澁澤龍彦 ねむり姫

「ねむり姫」(1982)は、同名の短編集に収録の一篇。定家「明月記」に想を得て、書かれたものらしい。中世の京都を舞台に、妖しく美しい物語が開かれていく。

後白河法皇の院政のころ、京に住むなにがしの中納言の娘に、名づけて珠名(たまな)姫というものがあった。
山から産する石のタマを珠といい、海から産する貝のタマを珠という。玉のような男の子という形容詞があるけれども、かならずしも玉が男性で、珠が女性ときまったものではあるまい。それはともかく、珠名姫はまだ幼いながら、その名が示す通り珠をきざんだような小づくりな美貌の持主で、蒼みをおびるまでに透きとおった、或る種の貝の真珠層を思わせるような皮膚の色をしていた。しかも皮膚の下に、ほんの少しの風でも吹けばたちまち消えてしまいそうな、小さな蝋燭のゆらめく焔があって、それが内部から貝殻の蒼みをほんのり明るませているといったふぜいである。このいのちの火ともいうべき蝋燭はいつ消えてしまうか分らない。はかなげといえばこれほどはかなげな印象はなく、その美しさに目を奪われるよりも早く、ひとびとはつい姫の将来を案じたくなるような、なにがなし憂わしい気分にとらわれがちであった。



晩年の澁澤は、ヨーロッパよりも日本に興味があったらしい。実際に、80年代以降の小説は、日本の古典を下敷きにしたものが多かったようだ。明月記、宇津保物語、夜想鬼談等々に想を得たみごとな物語が書かれていく。ねむり姫も然り、である。そして、この後の「うつろ舟」、「高丘親王航海記」、という傑作に繋がっていく。





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