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267. アントニオ・タブッキ 空色の楽園

「空色の楽園」は、短篇集『逆さまゲーム』(1981)に収録の一篇。物語は、主人公の女性リザベッタが、ユッペール夫人に秘書候補として面接を受けるところから始まる。主な登場人物は、この二人に加えて、実業家のユッペール氏、その仕事仲間でもあるドラトゥール氏とその妻、の五人。五人のスノッブの物語である。

「じゃ、これの題はなんていうの?」
ドラトゥール夫人の質問があまり突然だったので、わたしたちは足をすくわれた。準備にいそがしく、不意のお客に気もそぞろで、わたしもユッペール夫人も、イケバナに題をつけるのをすっかり忘れていたからだ。わたしは口をつぐんで夫人が返事するのを待った。ところが、夫人は品よくわたしに手で合図を送った。意味するところは明確だった。どうぞ、あなた、おっしゃってよ。あなたが考えたことを、わたしが言うなんて、とんでもないわ。
この場にふさわしい題を見つけようとして、わたしは絶望のあまり息がつまりそうになった。ドラトゥール夫人の不審に満ちた、問いただすような目が、まるで針のようにわたしを刺した。「楽園・・・・・・ええ、空色の楽園ですわ、伝統的なモリバナですのよ」わたしはひと息にこう言った。「お客様をお迎えする家の主人の心を満たしている天上のよろこび、という意味ですの」
(須賀敦子訳)


タブッキの作品は多彩である。長編、短編、幻想的なもの、アクチュアルなもの、ポルトガルやインドに向けられる興味・・・、そのいずれもに於いて先鋭的でパワフルで且つ独特の言葉にあふれていることに驚く。『逆さまゲーム』は、比較的前期の作品である。冒頭に引用されているロートレアモンの”ものごとの、なんのことはない裏側”という言葉が、作品集全体を貫く重要なテーマになっている。一見、主題も作風もばらばらの作品を11篇、寄せ集めたかのように思えるのだが、ようく考えてみると、そのロートレアモンの一節が掲げられている意味がわかってくるのである。

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