31.スチュアート・ダイベック ブルー・ボーイ

連作短篇集 『僕はマゼランと旅した』(2004) に収録。主人公であるペリーと弟の物語、ブルー・ボーイと呼ばれる少年とその兄の物語、優等生の少女の話、ペリーの祖父と父親の物語、それらの話が重なりあったり絡み合ったり剥がれていったりして、とても豊かな物語に仕上がっている。

 あるとき、よく友だちと二人乗りするときみたいに、ハンドルの上に危なっかしく弟を乗せて走っている最中――僕らはハンドルのことを友だち席(バディシート)と呼んでいた――僕はふっと衝動に駆られて、いきなりブレーキを踏んだ。ミックは宙空に投げ上げられた。宙をゆっくり舞っていたと思ったら、次の瞬間には歩道に落ちていた。(中略)
「わざとやったんだろ、この糞ったれ!」。ミックが泣いているのは痛いからでもあったけれど、それと同じくらい、バディシートをめぐる暗黙の信頼を僕が裏切ったからでもあった。
僕はミックの非難を強く否定した。あまり強く否定したせいで、本当に偶然ああなったんだと自分でも半分信じたくらいだったが、怪我させる気はなかったとはいえ、もちろん悪いのは僕だった。でもあんな真似をやったことの元にある乱暴さは、僕たち兄弟のあいだに仲間意識をもたらしてくれるものでもあった。そういう乱暴さが絆になって、僕らは一緒に何か穏やかなもの、大人しいものをコケにし、生きることを面白おかしいものに仕立て上げたのだ。(柴田元幸訳)


物語はシカゴの下町を中心にした狭いエリアに限定されているにもかかわらず、そこにはとても広い世界がある。とても広くて、つねに変化していて、ヨロコビ とカナシミにあふれていて、なんだかとてつもなく速くとてつもなく遅い時間が流れている世界、わけのわからない狂騒と退屈と情熱と怠惰に包まれた世界。・・僕たちが良く知っているその世界を旅するにつけては、そこにあの勇壮な探検家の名前を冠したくなるということなのだろう。

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