スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

287. ユーディット・ヘルマン 冷たい青

「冷たい青(コールド ブルー)」は、彼女の第二短篇集『幽霊コレクター』(2003)に収録の一篇。訳者によれば、この作品集のキーワードは”青春の終わり”だそうだ。人生の目的をなかなか定められず、大人になるのをぐずぐずと先のばしにしている世代を見事に描いているというような評価が、ドイツでは強いらしい。

マグヌスは仰向けになり、掛け布団を肩のところまで引っ張りあげて眠っていた。穏やかに規則的に、ほとんど聞こえないほど静かに呼吸している。夜、ヨニーナはときおり、彼の呼吸を確かめるために腹に触ってみる。ほとんど呼吸音が聞こえないからだ。ヨニーナはベッドの端に座って彼を見つめる。これは禁じられているのだけれど、それでもやってしまう。ときおり、彼の本当の顔を見ることができるのだ。(中略)
彼の顔が本当は冷たいのだということを、ヨニーナはたまにしか見ることができない。本当は攻撃的で支配的、決然としていて冷たい顔なのだ。(中略)この冷たさは彼女を突き放しはしないが、惹きつけもしない。それはよその人の冷たさ、一緒に十万年を過ごしてもまだ正体がわからないような、そんな人間の冷たさだ。それは水のような冷たい事実だ。冷たい青の事実だ。イレーネにはこのアイスランド語の言い回しがとても気に入っていた。ヨニーナはささやく、「ベルリンから郵便が来たわよ」そしてマグヌスを起こす。(松永美穂訳)


この作品集に収録の七編はすべて”旅”をテーマにしている。「冷たい青」は、アイスランドに住むマグヌスとヨニーナというカップルの基に、ベルリンから二人の友人が訪ねてくるという話である。
ヘルマンは、人間と人間の関係、こころの動きぐあいを、淡々と丁寧に綴っている。だから短編なのに、ぎっしりと文章が詰まっている感じ、中篇小説を読んだような気持にさせられる。現代小説にはめずらしく(?)細やかで静かな小説を広げてみせてくれる。なのに、読後には、なにか重みが伝わってくる。静かな筆致の下に隠されていたなにかが現れてくるのである。


関連記事
スポンサーサイト

⇒comment

Secret

被災地の学生を応援しよう!
プロフィール

jacksbeans

Author:jacksbeans
ようこそ!
記事のカテゴリ区分は、
①自転車、②図書室、③青、④メキシコ、⑤フルーツ、⑥階段、⑦画家、⑧スープ、⑨音楽、⑩綠、です



にほんブログ村 本ブログへ

ブログ村ランキング参加中、
クリックしていただけると幸いです。

カテゴリ
月別アーカイブ
04  12  09  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04 
検索フォーム
最新記事
PVアクセスランキング/海外文学
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。