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292. 萩原朔太郎 青猫

『青猫』(大正12)は、朔太郎の第二詩集である。
どの時代にも、どの街にも、・・・そこにはもちろん青猫がいて、「影」を作っている。
この影のイメージは、かなり怖ろしい。まっすぐに心を突いてくる。
もちろん、初めて読んだとき、わたしもたしかに慄いたのである。

ああ このおほきな都會の夜にねむれるものは
ただ一疋の青い猫のかげだ
かなしい人類の歴史を語る猫のかげだ
われの求めてやまざる幸福の青い影だ。
いかならん影をもとめて
みぞれふる日にもわれは東京を戀しと思ひしに
そこの裏町の壁にさむくもたれてゐる
このひとのごとき乞食はなにの夢を夢みて居るのか。
(「青猫」、第八行~最終行)



いつも思うのだが、この詩集の冒頭に付けられた朔太郎自身による「序文」がとても素晴らしい。
私が真に歌おうとするものは、≪それはあの艶めかしい一つの情緒  春の夜に聽く横笛の音  である。それは感覺でない、激情でない、興奮でない、ただ靜かに靈魂の影をながれる雲の郷愁である。遠い遠い實在への涙ぐましいあこがれである。≫・・・この序文だけ読んでも充分に愉しいものなあ。




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