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33.サルマン・ルシュディ 無料のラジオ

「無料のラジオ」 (1994)、河出書房の池澤夏樹編世界文学全集、『短編コレクションⅡ』に収録の一篇。
10頁ほどの小品だが独特で味わい深い。読後になにか癖になりそうなにおいが残るような気もする。物語の舞台はインドであるが、小説の味わいはボルヘス以降の中南米文学風でもある。

あの盗っ人の後家さんのとりこになっているうちは、彼にはろくなことはあるまい、とわしらはみな分かっていた。だけどその若者は天衣無縫、まったく世間を知らないときているのだ。そんな相手にものを教えるのは不可能だ。
その若者は幸せな一生を送れたはずなのだ。まばゆいような美貌に恵まれ、父親には早く死なれてしまったが、その父親が新品のとびきり上等なサイクル・リキシャ(輪タク)を残してくれたのだ。座席にプラスチックのカバーのついたやつだ。だからさ、男前で商売繁盛、そのうちによい女房だって手に入ったろう。何年かかけてなにがしかのルピーを蓄えればよかったのだ。だがそうはならなかった。顎にひげが生えだす前に、いや乳歯が抜ける前にと言ってもいいんだが、なんの因果か、ある盗っ人の後家さんにひっかかってしまったんだ。
(寺門泰彦 訳)


編者によれば、この作品は「人生の悲哀と社会の欺瞞を描くスケッチ」である。だが後味はけっして悪くない。悲哀と欺瞞を描きながら、不思議なことに主人公のサイクル・リキシャマンには奇妙な幸福感が漂っているような気がするのである。
これがまあブッカー賞作家の手腕というものか。リアルと幻想のあいだでゆらめくような奇妙な物語を書き綴っている。

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