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297. フェルナンド・ペソア 不穏の書

「不穏の書」は、ペソア(1888-1935)が二十年に渡って書いた”断章”をあつめた本。彼の散文詩の代表作である。作品は、ベルナルド・ソアレスと(いう異名で)署名された手記という形態を取る。邦訳は、澤田直・編訳の『不穏の書、断章』(思潮社)に抄録されている。

私は澄み渡った深い空を見上げる。ぼんやりしたバラ色のなにかが、雲の影のように、羽のはえた遠い人生の触知しがたい産毛が、浮かんでいる。目をおろすと、河には、水が静かなさざ波を立てて流れ、もっと深い空からやってくる青を反映しているかに見える。もう一度、空を見上げると、見えない空気のなかではっきりとちりぢりになってゆく曖昧な色調のあいだで、くすんだ白の痛々しい調子がすでに浮かんでいる。あたかもこれらの事物のうちになにかがあって、物がより高くより空虚であるあの高みでは、自分たちの物質的な倦怠を知っているかのように、自分自身であることが不可能であることを知っているかのように、不安と困窮でできた重さのわからない体を知っているかのように。
だからどうだというのだ。上層の空気のなかに上層の空気以外のなにがあるだろうか。空には空のものであるこの色調の他になにがあるのだろうか。・・・
(澤田直訳)


都市の孤独な散策者という体裁は、いわばマルテと同じであるが、話し手がリスボンの中年の会計士に変わるだけで、趣もずいぶん変わる。引用は、<倦怠>について書かれた断章の一部である。この倦怠は、虚無と同じか紙一重のところにあるが、なにしろリスボンである、澄み渡った深い空の下ではその虚無さえ白んでしまうかのようで、・・・だからどうだというのだと呟いてしまわざるを得ないのだろうか。

ところでペソアの詩集、「ポルトガルの海」(彩流社)は、とても美しいブルーの本である。これも、だからどうだというのではないのだが。

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