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298. チェーホフ 幸福

「幸福」(1887)、邦訳は岩波文庫版の短篇集 『子どもたち、廣野 他十篇』 に所収。
・・・羊飼いが、夜番をしている。一人は八十がらみの老人、もう一人はサーニカという若者。二人の頭上には天の川が広がっている。そんな夜の話である。朝焼けが見えてきた頃、もう一人の登場人物である騎馬見廻りの男が現れて、煙草の火を借りようと立止まり、三人の会話が始まる。

だが老人は、宝が見つかったらどうするか、返答はできなかった。生まれてこの方そんなふうにたずねられたことなど、どうやらこの朝が初めてらしかったが、浅はかで無頓着なその顔の表情からすると、それをそれほど重大なこととも、考える値打ちのあることとも思っていないようだった。(中略)
ぼんやりとまわりのぼやけた巨大な、真っ赤な太陽が昇った。まだひんやりとした、幅の広い光の帯が、露の下りた草に身を沈め、伸びをしながら、これは嫌なことではないのだと見せつけるように、嬉々としたようすで大地に横たわり始めた。銀色の蓬、野蒜の青い花、黄色い油菜、矢車菊  これらのすべてが、陽の光を自分自身のほほえみとして、いかにも嬉しそうに色とりどりに見え始めた。
(松下裕訳)


会話といっても、なんのことはない、取りとめのないはなしである。だが、ふとしたはずみで人生とか幸福とかいったところに話が行ったために、老人も、サーニカも、すこしだけ思いに耽ることになる。そしてもちろん、・・・『羊たちも同じように思いに耽っていた』のだという。
しかし彼らが思いに耽るのは、ほんのすこし束の間のことであって、彼らも、その思いも、すぐに朝の光に輝く草原のなかに羊とともに散ってゆくのだと思うのである。



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