303. ギャリー・ソト 中学一年

ギャリー・ソト(1952~)は、メキシコ系アメリカ人の詩人、作家。カリフォルニア州フレズノ生まれ。現在も、カリフォルニア州に在住している。
小説は児童向けが多いそうだ。短篇集『四月の野球』(1990)も、amazonではティーン・ブックスに分類されている。でもしかし、サローヤンの少年小説に似た味わいを持つこの作品集は、YAだけに読ませておくには惜しいほどの面白さがあふれている。小説の持つ愉しさに充ちている。・・・引用は「中学一年」という短編の冒頭。ビクター少年の、とても幸せな一日の物語。すごくチカーノらしい話だと思う。
中学の始業日、ビクターは三十分も順番待ちしてやっと登録台にたどりついた。書類一式とコンピュータ登録カードを手渡された。ぐらぐらする登録台で、登録用紙に選択科目、フランス語、と書きこんだ。(中略)
聖テレサ教会の教理問答のクラスにいたころに一目ぼれしてしまったテレサも、フランス語をとるだろう。運がよければ同じクラスだ。
テレサは今年、ぼくのガールフレンドになるんだ新学期の真新しい服を着た生徒であふれかえる体育館をあとにしながら、ビクターは心に誓った。
(神戸万知訳)
そうだな、なにがいいって、この短編集には・・・、「自転車」と「図書館」のシーンがいっぱいに詰まっている。つまりそれだけ、ある年齢の少年少女を描こうとすれば自転車と図書館が重要なアイテムになるってことなんだなと、今さらながらのことを思ったり感心したりする。
例えば「中学一年」という短編では、少年が嬉しそうに図書館に向けて駈けていくシーンがある。その部分を読んだだけで、この作品がいちばん好きになったほど。でも、短編集冒頭の「こわれたチェーン」とか、表題作の「四月の野球」とか、ほかにも自転車がたっぷり登場する作品もあって、どれもイチバンのような気がしてくるんだものな。
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今日もまた、こちらで面白そうな本をおしえていただきました。どうもありがとうございます。カタログで検索したところ、”Baseball in April ”を見つけましたので、早速予約をいれました。楽しみです!Sotoの本は、よくYA、児童書セクションで見かけるのですが、こういう内容だったんですね。
こんにちは
いつもコメントありがとうございます。
Sotoの本は初めて読んだのですが、すっかり好きになりました。
アメリカンガールの人形のおまけ本の「マリソル」という本(Soto作)も手に入れたので、これも読みかけています。
Sotoの本は初めて読んだのですが、すっかり好きになりました。
アメリカンガールの人形のおまけ本の「マリソル」という本(Soto作)も手に入れたので、これも読みかけています。