304. シオドア・スタージョン カクタスダンス


スタージョンの「カクタスダンス」(1954)は、アメリカ西部が物語の舞台になっている。物語の主役はメキシコ人の少女であるし、物語の中で、重要な役割をになうものとして、ペヨトル(メスカリン成分を含むサボテン)と、ユッカ(竜舌蘭科の植物、ニューメキシコの州花)という二つの植物が描かれているので、たぶんその場所はニューメキシコ州あたりだと勝手に考えながら読んで行ったのだが、途中で、たまらなく美しいシーンが出て来て、しかもそれがとてもわたしの考える「メキシコ」のイメージにぴったりだったということもあって、はれてここに登場することになったのである。
邦訳は『SFマガジン』2010年1月号に掲載。わざわざ図書館で雑誌のバックナンバーを漁るだけの値打は有ると思う。特に、引用部のあと、物語の中盤から結末にかけての部分が、すばらしい。SFでもウェスタン小説でもなく、美しい幻想文学のような味わいがあるのである。

わしが抱きしめても謝っても彼女は何も答えなかったが、恐れも届かない場所へわしの真心が届いたことはなぜかわかった。それからわしは、採集袋に何が入っているか思い出した。コーファにある交易所で、子供服をなんとか見つけたことがあったのだ。青い水玉模様のついた白のドレスで、何か重たい、硬仕上した素材でできていて、紙ヤスリにも穴をあけそうなくらいだ。上等だとは思っていなかったし、見つけたなかではいちばんいいという程度だったが、それを彼女に手渡したときに何が起こったかは、どう表現したらいいのかわからない。(中略)
わしはうなずいてにっこり笑い、いいから着てみなさい、おまえのものだから、と言ってやった。そしたら彼女は   
グランサムは太い人差し指で顎鬚をいじくっていたが、そこから小石をつまみだして捨て、しげしげと見つめた。
   光り出した」と彼は続けた。
(若島正訳)


「小説の中のメキシコ」について書いていこうと思ったとき、何から書き出そうかと考えて、やはりメキシコの作家から始めなくてはとか、メキシコ系アメリカ人の作家にもおもしろいものが多いなとか、そんなことにこだわらずにいちばん好きなメキシコの物語を選べばいいさというのはもちろんだけれども、フリーダ・カーロの絵から始めるのもいいなとか、SFにもメキシコ絡みの作品がたくさんあるんだとか、やっぱり探偵小説で国境を越えて犯人を追いかけるはなしがいいなとか、それはもちろんいろいろ考えたわけだけれど、結局あまり整理がつかないままスタートすることになった。それなら、率直に、読んだときにとても「メキシコのイメージにあふれているな」と感じたはなしから始めればそれでいいなと考えたのだった。スタージョンのこの作品は、そんな一篇である。



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