スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

37.アリス・マンロー 浮橋 

「浮橋」(2001)は、短編集『イラクサ』に収録の一篇。
読み終えて、その鮮やかさにため息が出た。

それは少年で、いや青年と言うべきか、自転車に乗っていた。ヴァンのほうへと向きを変えてきたので、ジニーもそちらへ回り、冷えたとはいってもまだ暖かい車体に片手をついて体を支えた。自分が作った水溜りをはさんで話をするのは嫌だった。それに、そんなもののある地面を見られまいとする思いもあったのかもしれない。ジニーは先に口を開いた。こんなふうに言ったのだ。「あら---配達かなにか?」
相手は笑って地面に飛び降り、自転車を倒した。すべてひとつながりの動きで。
「ここに住んでんだよ。仕事から帰ってきただけだ」


このあと、少年はジニーを家まで送ってくれる。その途中にある美しい「浮橋」を見せてくれる。病気で塞ぎこんでいた彼女は、それですっかり気が晴れてしまう。

「じゃあ、浮橋の上に乗ったのはこれが初めて?」
ジニーはそうだと答えた。
「こんどはこれから、そこを車で越えるんだ」
リッキーはジニーと手をつなぐと、投げ上げるような勢いで振った。
「それからね、おれ、結婚してる女の人とキスしたのはこれが初めてなんだ」
「きっとこれからもっと何人もとするわよ」
(小竹由美子 訳)


あまりにあざやかな小説術である。人間のこころの描き方があまりにあざやかなので、悔し紛れに老練だなんて言ってしまいそうになる。ほんとうはそんなことではないとわかっている。こんなふうに見つめる眼がほしいなんて大それたことは思わないようにしようと思う。

関連記事
スポンサーサイト

⇒comment

Secret

被災地の学生を応援しよう!
プロフィール

jacksbeans

Author:jacksbeans
ようこそ!
記事のカテゴリ区分は、
①自転車、②図書室、③青、④メキシコ、⑤フルーツ、⑥階段、⑦画家、⑧スープ、⑨音楽、⑩綠、です



にほんブログ村 本ブログへ

ブログ村ランキング参加中、
クリックしていただけると幸いです。

カテゴリ
月別アーカイブ
04  12  09  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04 
検索フォーム
最新コメント
最新記事
PVアクセスランキング/海外文学
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。