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319. ジム・セイゲル 話し合い 


ジム・セイゲル(1947-98)は、メキシコ系アメリカ人の作家、詩人。コロラド州生まれ。69年からニューメキシコ州に居を移し、教員、ジャーナリストのかたわら、ニューメキシコ大学で創作修士号を得、また詩人としてデビューした。

コラル・デ・ピエドラ地区から、プラサ・ラルガから、ロマやグアチェから、皆がみんなこぞって顔を出していた。コルコタウンからも、こちらは男だけが何人か立ち寄っていた。ホワイトがいた。大きなお腹がベルトの上にたっぷりと張り出して、まるで彼の飼っている孕んだ雌馬の腹とそっくりだった。(中略)
ベニーの顔もあった。椅子の背にどっかりともたれかかり、例によって気合いだけは入っていて声を張り上げていた。かれこれ二十年ばかりフードウェイで食糧雑貨の運搬をやり、いまはそれを卒業してフリートレーのトラックでリオアリバ郡をすみずみまで走り回る仕事についていた。ポテトチップの袋をスーパーの棚にぽんぽん手際よく並べることにかけては、ベニーの右に出るものはいなかった。(中略)
ベニーの母親、ラ・ヘレンは腰をかけて編み物にせいをだしていた。ついうっかり彼女の隣に坐ってしまうと、持病の話をえんえん聞かされるはめになった。(中略)
もちろんペラディートもやってきた。このグループのなかではただ一人の白人(アングロ)だったが、いつものように遅刻してきた。彼が自分の時計を<チカーノ時間>に合わせるようになって久しい。白人みたいに時間ぴったりに着きたくないばかりに、いつも三十分ちょうど遅れて着くようにしていた。(中略)
「おい、ベニー。よう。ゴッドファーザーはどこにいるんだよ?」(中略)
雑貨屋と酒場を経営し、このあたりの長老的存在だったのがゴッドファーザーだ。モーセよりも立派な髭をはやし、体つきは小柄だった。こういう話し合いに欠席したことはなく、いつもレジの向こうで、菓子やブルダラム、新聞エル・イスパノのコピーを売っていた。(中略)
「でもよ、どこほっつき歩いてんだろうな、ゴッドファーザー」ペラディートは話を戻した。
(久野量一訳)



「話し合い」は、短編集『君だけ、ハニー』(1981)に収録の掌編である。訳者によれば、この作品集は、ニューメキシコ北部のローカルなスペイン語で書かれていることが、大きな特徴なのだという。同時に、白人文化によるチカーノ文化への迫害に対する意識を、直截的な表現ではなく、独特のユーモラスな筆致で表現していることが大きな魅力だという。
・・・たしかに、ユーモラスである。スラプスティックですらある。引用した作品の冒頭の部分で、話し合いの場に、誰が来た、誰の顔があった、あいつも来た、こいつも来ていたと繰り返されていくところでは、もしかしてこの作品は、その繰り返しだけで終わってしまう前衛小説のようなものかと邪推してしまうほど。もちろんそれは杞憂で、ちゃあんと起承転結とオチのある立派な短編小説なのでありました。しかしチカーノの作家のユーモアも侮れないなぁ。




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