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320. アルトゥーロ・イスラス 雨に踊る人


イスラス(1938-1991) は、メキシコ系アメリカ人の作家。テキサス州、エルパソの出身。スタンフォード大学に進み、のちにチカーノとしては初めて博士号を取り、チカーノとしては初めてスタンフォード大の教師となった。訳者によれば、彼は、”その文化的ヴィジョンにより、チカーノの学生をはじめマイノリティ民族系学生たちに多大な精神的影響を与えた”、という。
イスラスは教職を務めるかたわら、小説を書いた。自伝的要素が投影された、メキシコ系アメリカ人のママ・チョーナを女家長とするアンヘル一族の物語を書き続けた。「雨に踊る人」は、第一作品集『雨の神』(1984)の抄訳である。岩波書店版のアンソロジー『私の謎(世界文学のフロンティア5)』に所収。

ママ・チョーナの長男フェリックス・アンヘルが、南部からやってきた十八歳の兵士によって殺されたのは、二月のある寒く乾いた日のことだった。二人は、山の東側に広がる砂漠地帯の峡谷に出掛け、フェリックスの車のなかでしばらくなにごとか話したあと、若者がフェリックスを蹴り殺した。山が地面に投げかける影によって、峡谷のあたりはもう黄昏のほの暗い陰に沈もうとしていたが、フェリックスの家のある西側では、いまだ日没前の最後の光が透明に輝く時間帯だった。この最期のときに、彼は家族のことを思い、とりわけ彼の一番末の最愛の息子ジョエルのことを思った。
(今福龍太訳)



もちろん抄訳ではなく、不思議な調子で続くアンヘル一族の物語をまるごと読みたくなる。「雨の神」というタイトルの持つ意味を、きちんと捉えてみたくなる。この物語の独特の味わいの源が、そこに作家の自伝的要素が投影されていることにあるのだとしたら、いっそうこの一族の行く末を最後まで見届けたくなる。いやしかし、この極めて重い家族の物語を読み切ることができるエネルギーが、果たしてわたしにあるかどうか、まず心配してみることが必要かもしれない。



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