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331. エリーナ・マリア・ビラモンテス 蛾

エリーナ・マリア・ビラモンテス(1954~)は、メキシコ系アメリカ人の作家。南カリフォルニア在住。
「蛾」(1985)は、十四歳の少女が、一人称で語る物語である。

私は、アブエリータ(おばあちゃん)に対して尊敬の念を持って接していたわけでもなかった。アブエリータが、熱を吸収する、といっていたジャガイモのスライスの効力さえ疑っていた。「現に生きているじゃない、そうでしょ」彼女はむっとして言い返した。生気のない片方の灰色の眼が、私の疑心に激しく穴をあけるかのように、私を見つめていた。胸に秘めていた疑念を口から滑らせたことに深く後悔し、彼女の眼を見ることはできなかった。そのとき、私の両手はひらひらと揺れ動くと、嘘つきの鼻が大きくなっていくように大きくなって、わき腹のあたりで錘のように垂れ下がった。アブエリータは、乾いた蛾の羽とヴィックスドロップから、バルサム軟膏を作って、私の両手に擦り込み、もとの大きさまで戻してくれた。
(渡久山幸功訳)


その語り口の、独特な感覚に驚く。語られている内容は、古めかしい因習が残るチカーノのコミュニティ(学校、家族、教会・・)に対する少女らしい当り前の嫌悪感や批判意識なのであるが、語り口の方は、独特で斬新で大胆で、かつやさしさとかなしみにあふれ、年長男子が検出できる感度限界を越えている。普段、バーバラ・ピムやメイ・サートンのような熟達の女性作家の文章ばかり読んでいるところに、急にこんな言葉と文章が現れてくると、そりゃあ途惑うのも仕方がない。チカーナの作家の手腕に驚くのである。



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