4.フィリパ・ピアス キイチゴつみ

夏休みのすぐあと、学校がはじまってすぐの土曜日。父親がそろそろ藪のキイチゴを摘みにいかなければならないと言い出したところから物語ははじまる。楽しいたのしい家族総出のイベントになりそうと思いきや、なにやら不穏なムードが漂い始めるのである。

ピーターはたずねた。「行かなくちゃいけないの?」
「自転車だ。」父さんはいった。「みんな自転車に乗って出かけるんだ。キイチゴつみにな。五人でやればたくさんつめるぞ。」
「あたし、おべんとうつくるわ。」ヴァルはいった。こういうことが好きなのだった。(中略)
しかし、いちばん年上で、しかもすっかり大きくなっていたクリスはいった。「ぼくは行かないよ。」(中略)そこで、ことしはキイチゴつみに行く者がひとりへった。
母さんも行かなかった。土曜日になると、母さんは気分がよくない。といった。(中略)
ふたりへっても、どうということはなかった。なぜなら父さんは、となりのターナーさんの子供ふたりをつれていくことにしたからだ。(中略)
「まず自転車だ。」父さんはいった。「調子がいいかどうか点検するんだ。…」
(猪熊葉子訳)


不穏なムードが漂い始める、でも心配は要らないんだけどね。
大人の目にはほんの些細なこととしか見えないことではあっても、子どもにとってかけがえのない意味を持つものとして記憶されるに違いない特別な経験。それを描くことがピアスはとても巧い。この短篇も、まさにそんな作品である。「キイチゴつみ」(1959-72)は、岩波少年文庫の短編集「真夜中のパーティー」に収録されている。

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