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☆ 真珠かもしれない歌


真珠かもしれない歌


まだメキシコ湾で真珠が採れた時代のこと。海に潜ると、その歌が聞こえることがある。といっても、ダイバーの心臓の鼓動がビートになり、海や魚がさっと通りすぎるときの音がメロディとなってきこえてくるというだけのことなのであるが。かごに投げこまれたすべての貝が真珠を宿しているかもしれない。その歌は、そんなふうに聞こえてくるらしい。

キーノは巧みに貝のふちからナイフをさっと入れた。ナイフをとおして筋肉がかたく引き締まるのが感じられた。彼がナイフの刃をてこのように動かすと、締まっていた筋肉が離れ、殻が二つに割れた。唇のような筋肉はのたうちまわったが、やがておさまった。キーノが肉をあげると、そこには、月のように完全な大きな真珠が横たわっていた。その真珠は光をとらえると、それを純化して、銀色の白熱光にして投げ返してきた。それはカモメの卵と同じほど大きかった。世界でいちばん大きな真珠だった。
ファナは息をのんで、すこしうなり声をあげた。キーノには、「真珠かもしれない歌」のひそかなメロディが急に、はっきりと美しく、豊かに、興奮してすばらしく、情熱的に、満足そうに誇らしげに聞こえてきた。彼は大きな真珠の表面に夢が結ばれるのを見た。
(中山喜代市訳)



“真珠かもしれない歌(Song of the Pearl That Might Be.)”は、ボブ・ディランの曲ではない。
メキシコの民話をもとにスタインベックが書いた中篇小説「真珠」(1945)に登場する歌である。



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