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347. ハリエット・ドウア イバーラの石 

ハリエット・ドウア(1910-2002)は、アメリカの作家。結婚後、何度もメキシコを訪れ、通算15年間、メキシコに住む。夫の死後、アメリカで大学に戻り、ヨーロッパ史の学位を取得。そのかたわら創作を学ぶ。第一長編の「イバーラの石」(1984)は、彼女の74歳の作品である。引用は、その冒頭の部分。

やはりここまで来てしまった。北アメリカの人間が二人、四十を過ぎたばかりの男とその年齢にわずかに届かない女が、人生の残りをメキシコで送ろうとやって来たのに、中央高原の広野で早くも道に迷っていた。ステーションワゴンを運転しているリチャード・エヴァートンは碧い目と黒い髪の頑固そうな男だが、この時本人が想像していたより三十年早くこの世を去っていく。かたわらの座席には妻のサラがいた。こちらは、差し迫ったものであれ、遠い先のものであれ、夫や自分の死など考えてはいなかった。心に描くのは今夜泊まるつもりの日干し煉瓦(アドービ)の家の、昔の姿である。その家は標高二千四百メートルの山腹、住民わずか千人のさびれた村、イバーラのはずれにあった。家は日没より一時間早く山の影でおおわれるが、その山腹を穿って縦横に坑道が通じている。五十年前、1910年の革命のさなかに、リチャードの祖父が手放した銅山である。
(三浦彊子訳)



なんてみごとな”書き出し”なんだ。不足がなく、余すところもない。物語は、まったくこのとおりの設定で展開されるのである。
   主人公の女性サラは、ドウアの分身である。作家自身のメキシコ経験が下敷きになった作品は、しかし、単純な自伝でも私小説でもなく、見事な物語を紡いでいく。・・・サラとリチャードの話が縦軸となって語られていく合間に、イバーラの村に住む人々のエピソードが幾つも挟みこまれていくのであるが、これがまさにマジックリアリズムに似た不思議な調子のメキシコ物語に仕上がっていて、読んでいて思わず頬が弛んでしまう。なんてこの語り手(サラ?ハリエット?)は、見事な嘘をつくんだと!



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