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359. ローリー・リン・ドラモンド わたしがいた場所 (あなたに不利な証拠として)

『あなたに不利な証拠として』(2004)は、 ドラモンドの第一作品集である。女性警官を描いた連作短編集の形を取っている。・・・「わたしがいた場所」もその中の一篇である。主人公のサラは、ある事件を契機に”生きている死者”のような気持ちに陥っている。職場を放棄し、住んでいた町を出て、ウェスト・ヴァージニア州、アイダホ州、ユタ州とあてもなく車を走らせ、とうとうニューメキシコ州まで来てしまった。

町はずれの寂しいでこぼこ道にその貸家を見つけた。(中略)
看板の連絡先を見て、通りの向かいの二軒先の家を訪ねた。年老いたメキシコ人の女性が出て来た。そんなにしわだらけで黒々とした目の人は初めて見た。黒髪より白髪のほうが多い太い二本の三つ編みが、頭のまわりを二周していた。顎は腫れた拳骨のようだった。耳は小さくて、生まれたての赤ん坊のように半透明だった。わたしが月極め契約は可能かと訊くと、彼女は痛いような視線でわたしを長いこと見つめた。英語がわからないのかもしれない、と思っていると、彼女は上の二本と下の一本がない前歯を見せ、笑ってうなずいた。
「ちがう、ちがう」彼女は強く訛った。「一カ月二百。わかったね?好きなだけ住んでいいよ」
(駒月雅子訳)



たどりついた町で、この年老いた女性を始めとしたメキシコ人たちに囲まれて暮らしていくなかで、サラは徐々に癒されていくように見える。しかし、簡単に、物語の結末を迎えるわけではない。彼女がこころに抱えた闇は深く、ほんとうの回復が可能かどうかわからないまま、物語は閉じていくように思えるのである。   この女性作家が書いた小説は、それ以前の警察小説とは明らかに違った視点で、独自の作品を作り上げることに成功している。俗っぽい言い方をすれば、警察小説の新たな領域を拡げたのである。



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