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361. マヌエル・プイグ 天使の恥部


「天使の恥部」(1979)は、プイグの小説、第五作。物語には、三人の女性が登場する。世界一の美女である映画女優、未来都市の治療師であるW218、アルゼンチンを逃れ1975年のメキシコ・シティで病に伏すアナ、・・・ ぼんやりと読んでいると、この三人がそれぞれ過去、未来、現在に生きるという設定だということも、そして実はこの内二人は○○であることも、うっかり読み損ねてしまっていたりするのだから注意が必要だ。以上、警告します。

「メキシコ人と比較すると、アルゼンチン人ってのはほんと笑えてくるわ。すべてを予測しよう、すべてをコントロールしようってやっきになってるから。すぐに分るわ、ここがどれくらい違うか」
「どういう意味で?」
「ここの人たちはもっと現在に生きようとしている。わたしたちみたいに未来のことを計画しようとはしていないの。それほど心配してないのよ」
「少し無責任ってことじゃないの?」
「そうかもしれない。でも、彼らが言うように、そのほうが人生はいっそう味わいがある、もっと驚きがある、もっとのびのびできる、でしょ?」(中略)

「メキシコ人のどこが感じがいいのか話してくれないか。このままじゃ、腹が立つ」
「ええ、でも、よけりゃ、冗談ととってくれたほうがいいわ」
「いいから、話してくれ」
「たとえば、ここではみんなが歌を歌う。アルゼンチンだったら、誰が歌う? なにか言ってみて?」
「アルゼンチンのことは話さないほうがいいよ」
「どうして?」
「もどれないとすると、自分がこの先、どうなるのかわからないんだ」
「それがそんなに大切?」
(安藤哲行訳)


引用は、メキシコ・シティで入院中のアナと、見舞いにきたポッシ(アルゼンチン時代の友人)との会話。73年、アルゼンチンの政変により国外に脱出し、以降、アメリカ、メキシコ、ブラジル等を転々としながら小説を書き続けたプイグ自身の姿を、文中の二人の会話に重ね合わせてしみじみしそうになるが、ことはそう簡単なものでもない。むしろ、ここでプイグは、対話ってもののむなしさについて語っているような気もしてくるのだから、読む方もたいへんだ。
プイグ(1932-90)の作品をデビュー作から順に並べると、「リタ・ヘイワースの背信」、「赤い唇」、「ブエノスアイレス事件」、「蜘蛛女のキス」、と来て、本作。・・・どれも独特である。とんでもない小説ばかりである。この作品にも、サスペンス、SF、ロマンス、ポリティカル・フィクション、いろんなものがぎっしりと詰まっている。読みごたえあることこの上なし。以上、報告します。



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