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362. マリオ・バルガス=リョサ 悪い娘の悪戯


物語の語り手は、ペルー人の青年、リカルド。平凡で、ロマンや情熱に欠ける。面白みのない男。しかし、彼には生涯つきまとうことになる”愛”があった。その愛ゆえに、大冒険の主役を演じる羽目にもなった。仕事を得てリマからパリに出たリカルドは、その後、ロンドン、マドリッドと舞台を移しながら、その”愛”につきまとわれることになる。”運命の女”につきまとうことになる。   引用は、ロンドンでの物語の一節。ここで、運命の女たるニーニャ・マラは、自分をメキシコ出身だと称しているが、それはもちろん騙りなのである。運命の女らしく、会うたびに姿を変え、嘘をつき、魅了し、罵倒し、翻弄する。

たぶん何かのパーティーの写真だろう。三、四組のカップルが、上品な身なりでグラスを片手にカメラに笑顔を向けている。あれっ!?  いや、単なる他人の空似だ。再度じっくりながめたのち、疑念を捨て去った。その日のうちにパリに戻り、その後二ヶ月間はロンドンに行くことはなかったが、しきりに頭をよぎる疑念はいつしか確信に変わっていた。まさかとは思うが、元チリ娘、元女ゲリラ兵、元マダム・アルヌーが、今ニューマーケットにいるなんてことがあるだろうか? 最後に会った日、彼女がアパートに残していった、お守り代わりのゲランの歯ブラシを、指先でもてあそびつつ何度となく自問した。そんな偶然、あまりにできすぎで、どう考えてもありえない。そう思いながらも疑念   というより期待   を消すことはどうにもできず、次に仕事で再びロンドンに出向く日を指折り数えて過ごした。
「彼女を知ってるかって? (中略) ミセス・リチャードソンっていって、突然降って涌いたに現われた女性だけど、燃える炎みたいに人一倍目立っててさ。メキシコ出身らしくて、とんでもなく面白い英語を話してね。耳にしたら、きっとおまえも笑いが止まらんだろうな。だけど、本当に知合いか?」
(八重樫克彦・八重樫由貴子訳)



「悪い娘の悪戯」(2006)は、バルガス=リョサが70歳で書いた長編恋愛小説であり、自伝的とも思えるような物語である。50年代のリマ、60年代のパリ、70年代のロンドン、80年代のマドリッドを舞台に、ひとりの男の姿が描きだされている。
   これは、作家自ら”いつか書きたいと長年温めてきた作品”であるという。たしかに、それだけのことはある。すこぶる魅力的な小説、いや魅力的すぎる物語なのである。



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