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365. 星野智幸 最後の吐息

「最後の吐息」(1997)の冒頭の部分を引用してみる。
作品は二重構造になっていて、このプロローグの文章の後に、”作中作”としての『最後の吐息』という小説が展開されていく形になる。余計な情報を添えれば、作中作はガルシア=マルケスへの、作品全体としては中上健次へのオマージュになっている。

まだ読んだこともない作家が死んだ。その作家の死を真楠はメキシコで知る。メキシコの目も眩む陽の下で、いつも新聞を読む芝生に座り、日本から送られてきた新聞の訃報記事を読む。強い陽射しのもとで日本語の活字を眺めていると、目眩を起こしそうで、近くの木陰に入る。頭の上の枝から、チチチと鳴く声がする。顔を上げれば、緑に輝く小さなハチドリが、真っ赤なハイビスカスの甘い蜜を吸っている。真楠はその姿を見るのが好きだ。スペイン語の新聞を読んでいると、必ず蜜を吸いにきて、チチチと満悦の声をあげる。真楠もハチドリになりたいと思う。ハチドリになって、緑と金に光るしなやかな黒い体を隅々までコントロールしながら自在に飛び、何もかもさらけ出したように咲き乱れる赤や黄色のハイビスカスの蜜を吸う。むせるように甘い蜜と香りに、思わずチチチと愉悦の声が漏れる。そうすると、いま味わっているような、自分が架空の人物であるような気分は、跡形もなく消えて、輪郭のくっきりした世界に生きられるだろう。想像上の生き物であるようなこの気分がなくなるのなら、何になってもいい。



”作中作”には、重要なアイテムとして金細工の魚が登場する。
これは、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』の中で、退役後のアウレリャーノ・ブエンディーア大佐が作り続けたという”金細工の魚”をイメージしたものである。このアイテムにまつわる物語をどう展開していくのか、それがこの作品のまさに読みどころだと思うのである。おっと物語の語り手は、もちろん上記の”ハチドリくん”である。



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