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372. コーマック・マッカーシー すべての美しい馬

「すべての美しい馬」(1992)は、彼の長編第六作。邦訳としては、最初に紹介された小説だった。物語の舞台は、1949年から1950年にかけてのテキサス州とメキシコ。主人公はジョン・グレイディ、16才。実家の牧場が人手に渡ることになり、何よりも好きな馬と牧場の仕事を続けるために、彼は友人のロリンズとともに、メキシコに行くことにする。
・・・引用は、物語の中盤、メキシコでの二人の姿を描いた場面。本当なら「美しい馬」のシーンを引用すればいいのだろうが、なによりもこの場面がわたしは大好きなのでありました。

二人はビクトリア通りの男性洋品店で新しい服と帽子を買いそれを身につけて通りに出てしとしとと降る雨のなかをバス停留所まで歩きロリンズが乗るヌエボ・ラレード行きのバスの切符を買った。ごわごわする新しい服を着た二人がバス停留所のカフェにはいって新しい帽子をそれぞれ隣りの椅子に逆さまにのせて坐りコーヒーを飲んでいるとやがてバスの発車を告げる声がスピーカーから流れた。
 おまえのバスだ、とジョン・グレイディがいった。
 二人は腰を上げて帽子をかぶり乗り場に出ていった。
 じゃあな、とロリンズがいった。そのうちにまた会おうぜ。
 気をつけてな。
 ああ。おまえもな。
 ロリンズは向こうをむいて運転手に切符を渡し運転手が鋏を入れて返すとどことなくぎこちない動きでパスに乗りこんだ。彼が通路を歩いていくあいだジョン・グレイディはじっと立って見ていた。ロリンズはこちら側の窓際の席に坐るだろうと思ったがそうはしなかった。相棒が反対側の席についたのでジョン・グレイディはしばらく佇んだあとで踵を返して歩き出し停留所から出て雨の降る通りをゆっくり歩いてホテルに戻った。
(黒原敏行訳)



「すべての美しい馬」は、たしかに素晴らしい青春小説であると思う。二人の少年の駆ける姿、彼らを駆る血とその血の熱さ、後先を考えずに行動する峻烈な姿、そういったものがこの小説の魅力になっていることに異を唱えるつもりはない。しかし同時に、この作品の底の部分を流れているもっと静かなもの、暗くてかなしみにみちたもの、どくどくと流れつづけるやり場のないエネルギーのようなもの、どちらかというとそうした負のイメージの方に心がとらえられてしまったような気がするのは、年長さんの気の迷いのようなものなのだろうか。

PS.引用部のシーンは、映画ではサラッと扱われている。残念。



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