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379. ドン・ウィンズロウ 犬の力

ドン・ウィンズロウの「ニール・ケアリー」シリーズは、貴重だ。
第1作の「ストリート・キッズ」(1993)は、強烈だった。青春小説であり、探偵/ハードボイルド小説でもあるという欲張りな設定が、見事に活きている。峻烈な小説である。いつのまにか探偵の高年齢化が進んでいる「業界」の中で、(スペンサーは脂ぎり、キンジーは太る・・・)この小説のニールは、十代!である。ピュアで不幸な若者が、ケナゲに必死に、愛と誇りを持って、探偵物語の中で成長していく、ってどこにでもあるような仕掛けだけれど、その狙いどおりに泣いたり笑わされたりしてしまった、そしてそれが心地よい、という稀有な小説。
・・・だから、「犬の力」(2005)には、あまり食指が動かなかった。
ウィンズロウは「ニール・ケアリー」だけでいいという、そんな気持ち。そんな狭量な思いによる。

きょうは死者の日だ。
メキシコの一大行事。
その伝統はアステカ時代にさかのぼり、”死の淑女”である女神ミクテカシワトルを称えるものだが、スペイン人司祭たちによる整理統合で、万聖節の前夜祭及び万霊節といっしょくたにされ、真夏から秋へと移された。そういう征服者の都合など、アートにはどうでもいいことだ。ドミニコ会士たちがどう呼び換えようと、これが死(ラ・ムエルテ)にまつわる行事であることに変わりはない。(中略)
死者の日だって? アートは、ラホーヤの通りに停めた車の中でつぶやく。自分の墓石に飴玉でも載せてやるか。
(東江一紀訳)



「犬の力」、物語の舞台は、米墨国境の辺り、主人公のアートはアメリカの麻薬取締官であり、何か憑かれたようにメキシコの麻薬カルテルの撲滅に取組んでいる。
・・・訳者によれば、これは”壮大な怒りの物語”だという。いざ読んで行くと、ここには「ニール・ケアリー」シリーズのような痛快さや爽快感は微塵もない。ただ血塗られた抗争とそのなかであがく人間が描かれているだけである。”犬の力”から解き放れたいと叶えられない願いをつぶやく人間が描かれているだけである。
それなのに、物語には魅力があふれている。最後まで読まずにおられなくなるのは、とんでもないエネルギーがここには秘められているからである。怒りがとてつもなく大きなエネルギーであることにあらためて気づかされるのである。



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