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385. アントニオ・ベラスコ・ピーニャ レヒーナ/エレナ・ボニアトウスカ トラテロルコの夜

<アントニオ・ベラスコ・ピーニャ レヒーナ>

ピーニャ(1935~)はメキシコの作家である。歴史小説を得意とするという。
その第二作「レヒーナ」(1987)は、小説として読むとずいぶんラフな作品である。”メキシコとチベットをむすぶ数奇な運命に生まれ、人々を覚醒に導いた、少女レヒーナの美しくも壮烈な物語”という惹句は一見魅惑的であり、例えば、次のような視点・・・古代メキシコとチベットの文化が通底しているという・・・には、ちょっと気を惹かれたのだが。読み進めると設定もプロットも乱暴で、ただ得体の知れないエネルギッシュな展開力だけで読ませる類の本かなどと思ったりする。

チベットの神政を司る最高位のラマ僧の間では、ラト・ト・リ王が始めたチベット国内の仏教布教よりも前に、一人の謎に包まれた賢者がメキシコから到来したと信じられている。その高度な教えが、衰退していたチベットの文明を発展させる大きな原動力となった。その時期と謎の人物の正体を推定するのはきわめて難しいが、マヤの神官だったとみられ、チベットに滞在したのは紀元一世紀頃とされる。
(竹西知恵子訳)


しかし、実話を基にした作品として読むと、・・・これはメキシコの1968年のトラテロルコ事件を基にしたものであり、そのスピリチュアルな側面を描き出したのだというのだが・・・途端に、どう読めばいいのか途方に暮れることになる。単なるカルト小説と片づけたくなるような部分と、事件の当事者の一人であったという作家が、なぜレヒーナを死してまた蘇る巫女のような存在として描いていったのか、最後まで読み続けてそれを確かめたくもなる。結局は、わけのわからないまま本を閉じるはめになりそうだとしても。


<エレナ・ボニアトウスカ トラテロルコの夜>

だが、わけのわからないまま本を閉じることにならないために、よい解決策を見出した。当たり前のことではあるが、この「レヒーナ」という本を少し脇に置き、先にトラテロルコ事件についてきちんと書かれた本を読んでおくべきだったのである。
    ということで、藤原書店から翻訳が出ているエレナ・ボニアトウスカの「トラテロルコの夜」(1971)を読んでみることにした。小説ではなくて、ノンフィクションである。”事件の目撃者が発した声のコラージュ”なのだという。”この本は我々に歴史を示してくれる一編のクロニクルである”というオクタビオ・パスの力強い序文が添えられている。

大勢いる。歩いてやって来る。笑いながらやって来る。「メルチョール・オカンポ」、「レフォルマ」、「ファレス」、「五月五日」の通りを、ほんの数日前縁日に出かけたときと同じように楽しげに腕を組みデモ行進する学生男女。明日あるいは二日後、四日後には自分たち自身が「縁日」の射的小屋の標的になって、腫れ上がった身体を雨に曝していようなどとは露知らず、屈託のない若者たち。標的となったまだ子どものような年若い彼らは、あらゆるものに嬉々とする子ども、毎日が祭りのようなもの。しかしそれは、クリッ、クリッと音を立て列をなして進む銀めっきのひよこのように「くっついて並べ」と射的小屋の主人が彼らに命じるまでのこと。目の位置にさしかかると「構え、撃て!」、そして赤いサテンの幕をかすめながら後ろに倒れる。
(北条ゆかり訳)


引用は、「トラテロルコの夜」の冒頭の部分である。事件の前夜の様子を描いている。そして、このあとに事件当日についての様々な証言記録が示されていくことになる。・・・もちろん、これは1968年のメキシコの事件記録である。それをきちんと踏まえたうえで、日本の1968年についても思い返してみることにすればいいのだと思う。




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