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388. チェスタトン ブラウン神父の醜聞


「ブラウン神父の醜聞」(1935)は、シリーズ最終の第五短篇集の表題作である。
ここで神父はなぜかメキシコのとあるホテルに現われる。時代に思いをめぐらせば、折しもメキシコはカトリックの迫害期であった。チェスタトンもまた何か思うことがあってメキシコに赴いたのだろうか。

「マダム、失礼ながら、内密にお話ししたいことがあります」
「まあ」とハイペシアは輝かしいまなざしで部屋を見まわしながら言った。「こんな所で内密なお話ができますかしら」
ロックもあたりに目をはしらせたが、生き物といえばせいぜいオレンジの木ぐらいのもので、これとて植物であった。もっとも、一つだけ、大きな黒きのことしか見えないものが  判別するに、どうやらこの土地の司祭かなんかの帽子らしいが  あって、その主がこの地方の黒い葉巻をのんびりとふかしていたが、その煙を除けば、これも活気のない草木のごとしであった。ロック氏はその人物の鈍重そうな無表情の顔を一瞥して、ははあラテン系、とくにラテン・アメリカ系の国では小作農から神父になる人が多いそうだが、なるほど、あの顔の野暮ったいところからして、あれはそういうひとりだろうと見当をつけた。そこで幾分か声を低くして、笑いながら言った  
「あのメキシコ人の坊さんにはわたしたちの言葉はわからんでしょう。ああいう無精のかたまりみたいな連中が自分の国以外の言葉を習うことがあったら、それこそ奇跡とというものです。いや、あれがメキシコ人にちがいないとは断言しません。何であるかわかったもんじゃない。(中略)」
「実に実に」とその低級な人物が黒い葉巻を口から離しながら言ったものである。「わたしはイギリス人でして、名まえはブラウンと申す。しかし、おふたりだけになりたいとおおせられるのなら、おじゃまはいたしません」
(中村保男訳)



例によってここには奇怪な惨事も大がかりな立ち回りも登場しないものの、みごとな探偵小説が綴られていく。
これは一種の叙述トリックのようなものか、とでも呟きたくなるものの、それ以上はネタばれになりそうなので控えておこう。書けるのは、どれもみごとな短編であるということと、この短編集でおしまいなのが残念ということくらいである。仕方がないので、秘蔵のビデオテープ(英国TVドラマ版ブラウン神父)でも見ることにしよう。



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