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47.サマセット・モーム お菓子と麦酒

「お菓子と麦酒」(1930)、モーム、中期の長編。主人公の作家が、自身の少年、青年時代を回想しながら、付き合いのあった年上の作家とその妻について語って行く。この一人称の物語を辿って行くと、ひとりの作家の成長小説ということになるし、またとびきり魅力的な女性として描かれる「年上の作家の妻」に焦点を合わせると、もうひとつ別の恋愛小説を読んでいくということにもなる。この二つが合わされて、古めかしいけれども濃密な作品に仕上がっているのである。

エドワード・ドリッフィールドがわたしに自転車を教えてくれたのは本当であった。事実そのためにわたしは彼を知るようになつたのである。安全自転車が発明されてもうどれくらいになるか知らないが、わたしの住んでいたケント州の片田舎では、そんなものは余り見られなかつたと思う。しつかりした護謨輪の自転車に乗って行く者があると、必ず振りかえつて、見えなくなるまで見送つたものである。当時はまだ、中年の紳士達がふざけて、わし達は親譲りの膝栗毛で結構だ、などと言つていた時代だし、年輩の婦人達は向うから自転車が来るのを見ると、あわてて路傍へ避けた時代でもあつた。(中略)
「よかつたら教えてあげましょう。」とドリッフィールドはにこにこして言つた。「さあ、いらつしやい。」
「いいえ、いいんです。」とわたしは言つた。「僕、いいんです。」
「どうして。いいじやありませんか。」と彼の妻が言つた。青い眼に例の浮き々するような微笑を浮べて。
(上田勤訳)


この青い眼の女性=ドリッフィールド夫人が、この小説のもう一人の主人公である。…その眼はいつもうっとりするような微笑で輝いていた。顔も髪も、どこからどこまで金色である。ところが全体の感じは銀色であるという。彼女は光を放つのだが、その光は白く、太陽よりは月の感じなのだというのである。
誰もがひとめで心を奪われてしまったというのがわかるような気がしてくる。もちろん、百年後の読者も例外ではいられなかったのである。


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