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395. グレアム・グリーン 権力と栄光


メキシコに魅せられたヨーロッパの作家は何人もいる。しかしグリーンも「権力と栄光」(1940)という作品も、それにはあてはまらない。この長編は、作家が、1920~1930年代のメキシコの宗教迫害についての記事を書くためにメキシコを訪れたことを契機に書かれた作品である。

まもなく、母は夫の部屋に入っていった。彼女はいった。
「わたし、坊やにはほとほと困りましたわ」
「娘たちの方にはどうして困らないのかね?どこにだって心配事ってのはあるよ」
「女の子の方は二人とも、今のままでかわいい聖徒ですわ。でも、あの坊やときたら   あの子ったらこんなことをきくんですもの   あのウィスキー坊さんのことを。わたし、あの人にはうちに来てほしくなかったわ」
「うちへ来なかったら、もうつかまっていたろうな。そうなっていたら、あの人も、おまえのいう殉教者の一人になっていたろうよ。そして、彼について本が書かれ、おまえがその本を子供たちに読んできかせていたろうな」(中略)
「ここは小さな町だよ」と、夫はいった。「気取ってみたって何にもならない。わたしたちは、ここじゃ世間から見捨てられているんだ。わたしたちはできるだけうまくやっていかなくちゃならない。教会についていえば、(中略) わたしたちが教会がいやなら、そう、教会をすてなければならない」(中略)
「わたし死んだ方がまし」と、彼女はいった。
「ああ」と、彼はいった。「そうとも。いうまでもないさ。だが、わたしたちは生き続けなければならんのだ」
(斎藤数衛訳)



・・・物語の主たる登場人物は、逃げおくれた司祭と、それを追跡する警部、そしてメキシコ南東部のタバスコ州の村人たちである。司祭はあらゆる戒律を破りながらもなぜメキシコに残り逃げ続けなければならないのか、警部はなぜ追跡しつづけなければならないのか、村人たちはなぜ司祭を匿ったり密告したりすることになるのか。グリーンの筆致は極めて明瞭で、その分、冷酷にも見えるほどである。




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