50.グラント・アレン テムズ・ヴァレイの大災害

「テムズ・ヴァレイの大災害」(1897)、この短編は、風間賢二編のアンソロジー『ヴィクトリア朝空想科学小説』に収録されている。編者によれば、グラント・アレンは英国世紀末の大衆小説家であったが、現在では完全に忘れられており、もちろん我が国ではまったく知られていないという。しかし、19世紀英国ゴースト・ストーリーとH・G・ウェルズをつなぐ作家として重要であるともしているので念のため。

十時ごろ、わたしはタイヤに空気を入れて出発した。オックスフォードまで、川のうねりに沿ってマーロウやヘンリーを通り、ゆっくり遠回りしていくつもりだった。まずはじめにクッカム橋を渡ったが、これが木製だったか鉄製だったか、はっきりとは覚えていない。とにかくその橋は、村の近くでテムズ川をまたいでいた。興味のある向きは、当時の地図をご覧になれば正確な位置を知ることができるはずだ。
わたしは橋の真ん中で自転車を停めて、みごとな景色を楽しんだ。おそらく、その場所の在りし日の姿を最後に目にした生存者は、わたしということになるだろう。
(田中誠 訳)


突然テムズ川を襲った溶岩流から、自転車旅行中の主人公がひたすら逃げまくるという物語である。
現代的なSFの要素はまったくなく、まさに19世紀末の古めかしい「空想科学小説」なのである。いまなら、パニック小説とよばれるのかも。しかし、火星人は襲来するは、溶岩は噴出するは、この頃のロンドンはたいへんだったんだなあ。

PS. 同じように自転車旅行をしていたアメリカ人は溶岩流に巻き込まれて死んでしまう。ズボンの裾をクリップで留めておらず、ぺダルに引っ掛かってしまい、逃げ遅れたのである。やっぱりクリップは必要だなぁ、というのが自転車乗りとしての今日の教訓。

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