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407. アンナ・シュウエル 黒馬物語 (フルーツ小説百選)

○BlackBeautyCoverFirstEd1877


黒馬物語(1877)は、19世紀のイギリスで数多く生まれた児童文学(童話文学)の傑作のひとつである。ほぼ同じ時代に生きたルイス・キャロル、キングスレー、トマス・ヒューズ、フランシス・ホジソン・バーネット、ジョージ・マクドナルド、ジョン・ラスキンなどの作品を並べてみると、とても豪華なラインアップができあがる。きっと、今、読んでも、初めて読んだときの楽しさがたぶんそのまま蘇ってくるだろうと思うのはもちろんだが、やっぱりもったいないから読まずにおこうと、そんなふうにも思ってしまうような傑作揃いである。

家のかこい場や、古くからある果樹園にはなしてもらうのは、わたしたちにとって、それはたいへんな楽しみでした。草は足に、ひやりとやわらかく、空気はいいにおいがしました。かけたり、横になったり、寝ころがったり、おいしい草をちょっとかんでみたり、好きなことが自由にやれるのは、なんてうれしかったでしょう。またこの時間は、大きな栗の木かげで、みんなで語りあうにつごうがよかったのでした。
(中略)
話がまた、いくらかとげとげしくなってきました。するとメリイグレスが、そのりこうそうな小さい顔をあげて言いました。(中略)「みんな元気をだそうよ。そして果樹園の向こうのはしまでひと走りしよう。きっと、風で、りんごが少しは落ちてるだろう。」

だれもメリイグレスの意見に反対しようとしませんでしたから、この長いおしゃべりをうちきって、みんな草の上にちらばっている、とてもおいしいりんごをむしゃむしゃかじって、元気をだしました。
(吉田健一訳)


黒馬物語は、主人公のブラック・ビューティという馬による(なんと!)一人称形式の物語である。気楽な仔馬時代から、数多くの苦難に出会う青年期を経て、静かに年老いてゆく晩年までを描いていく彼の自叙伝的な物語である。引用部を読むと、馬たちにとっても"果樹園"は、楽園のようなものなのだなあ、ということがわかる。(笑)

黒馬物語の邦訳はいくつか版があるが、ここはぜひとも、創元社の『世界少年少女文学全集』で読みたいところである。理由はもちろん吉田健一訳の黒馬物語が読めるからである。

ぼんやりとこの全集の目録をながめていて気がついた。驚くべきことに、この全集には、吉田健一訳の"アリス"まである。幸運とは思いがけぬところに転がっているものだなあ。荒れた土地にも、風で、りんごが少しは落ちてくるのだな。



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