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409. アガサ・クリスティ ヘスペリデスのリンゴ (フルーツ小説百選)

○HesperidesBurne-Jones
(バーン=ジョーンズ「ヘスペリデスの園」,1869)


エドワード・バーン=ジョーンズ展が巡回中である。
残念なことに今回の展覧会では、『黄金の階段』も、『ヘスペリデスの園』も、見ることができないらしい。階段と果物について書いているブロガーとしてはどうすりゃいいのか。なんてついてないんだ、と花田秀一クンのように嘆くしかない。

しかし、代わりに、いいものを見つけた。クリスティの”ポワロもの”の短篇集『ヘラクレスの冒険』(1947)である。この中に「ヘスペリデスのリンゴ」という一篇が収録されているのである。
ギリシア神話の”ヘラクレスの十二の難業”を下敷きにして書かれたこの連作集は、予想以上に面白かった。ポワロものの短編がこんなに楽しいとは!と驚くとともに、あらためてクリスティのとんでもない才筆ぶりに感嘆したのでありました。・・・ちなみにポワロの”エルキュール”という名は、英語ではヘラクレスのことだったんですね。

ポアロは大きなマホガニーの机の後ろの男の顔をしげしげと眺めた。太い眉、薄っぺらなみすぼらしい口、貪欲なあごの線、鋭い夢想的な目、かれはこのエマリー・パワーがなぜ財界の権力者になれたのかが、その風貌からわかった。(中略)
「あんたは最近あまり多くの事件を引き受けないらしいが、これはやってくれるだろうと思うよ。(中略)ある美術品を取りもどしてもらいたいのだ。それはルネッサンス時代の金の酒盃で、教皇アレクサンダー六世   ロデリゴ・ボルジアの使ったものだといわれている。かれはときどき賓客にそれで酒をごちそうえした。すると、その賓客はたいがい死んだそうだ。(中略)真正価値は確かに相当なものだ。細工がすばらしい   ペンヴェヌト・セリニの作だといわれている。浮き彫り模様は、一本の木に宝石をちりばめた蛇がからまりつき、その木になっているりんごがじつに美しいエメラルドで作られている」
「りんご?」ポアロは急に関心をそそられたようにしてつぶやいた。
(高橋豊訳)


ヘラクレスの難業の内、”ヘスペリデスの園の黄金のリンゴ”を基にしたこの短編も、とてもよくできていて、気が利いている。作中、”アトラス”という名の男が出てくるくだりなど、爆笑級である。
なおこの”黄金のリンゴ”については、クリスティ以外にも、これまでに幾つもの詩、小説、美術、音楽の題材として取り上げられてきている。イェイツからブラッドベリまで、或いはワーグナーやバーン=ジョーンズなど、わたしのブログでも幾つか記事を重ねようと思っているので、読んでいただけると幸いである。

追記; ポワロの秘書の名前は、”ミス・レモン”という。これで、もうひとつくらいフルーツ小説の記事が書けるかもしれない(笑)



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