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415. 梨木香歩 檸檬/ミニヨンの歌 (フルーツ小説百選)

小説の中のレモン、とくればもちろんゲーテの”ミニヨンの歌”にふれなければならない。
”きみ知るや南の国。レモンの花咲き・・・、” という一節から始まるこの歌は、これまで歌曲になりオペラになり、またさまざまな小説の中で引用されてきたのだが、はてさてこれはいったい、言われるように”楽園の歌”であり、またイタリアを理想郷に見立てた”アルカディア願望”を写したものなのだろうか。

梨木さんの『家守綺譚』(2004)の一篇、「檸檬」にも、このミニヨンの歌が登場する。
おなじみの”ダァリヤ”さんが登場してきて、  「いと年経たる龍の ところ得顔に棲まい」、とこの歌の一節を呟いてみせるのである。
このあと、作中では、この一節を聴いて嬉しくなった”私”が、ミニヨンの歌の第三連を諳んじてみせる。するとダァリヤさんは、「広い龍の洞の奥には、常夏の国の果実も、高山に咲く花も、何でもあるというのですが。本当かしら。本当みたいに思えませんでしょう。」となにやら不思議で不穏な台詞を口にして去っていく。”私”は、「それが本当で、なにか不都合がありますか」と応える。 

  君知るや 山の道
立ち渡る霧のうちに 騾馬は道をたずねて
嘶きつつ彷徨い 広き洞の中には
いと年経たる龍の ところ得顔に棲まい
行き帰る白波の 岩より岩を伝う
彼の懐かしき山の道を
  彼方へ
君と共に行かまし


梨木さんの作中では、” 年経たる龍”に焦点を当てるためだろうか、ミニヨンの歌の第三連を、こんなふうに訳している。

・・・”きみ知るや南の国。レモンの花咲き・・・、”と高々に楽園の憧憬をうたった筈の第一連から、この第三連までのたった十数行の間に、憧憬が、なにやら嘆息と追憶の場に変わってしまったような気がするというのは、我ながら単純な感想である。単純というより短慮というべきか。ともかく、「檸檬」を読みながらふとそんなことを考えてしまったのである。



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