52.ブルガーコフ 巨匠とマルガリータ

巨匠とマルガリータ(草稿1928-36、出版1967)、…モスクワの街を跋扈する悪魔のヴォランドと珍妙な手下たち、彼らに操られるモスクワ作家協会の会員たち、同じく翻弄される巨匠とマルガリータ、作中作の物語に現れるキリストとローマ総督ポンティウス・ピラトゥス、‥とこんなふうに登場人物を書き連ねていくだけでこころが踊る。傑作小説というのはそういうものではないだろうか。

穴のあいた黄色い山高帽、チェックのズボンにエナメルの編上靴といったいでたち、赤紫の洋梨に似た鼻をした小柄な男がありふれた二輪の自転車に乗ってヴァリエテ劇場の舞台に登場した。フォックストロットの調べに乗って男はぐるりと舞台を一周し、それから自転車の前輪を持ちあげるようにして後輪だけで立つや勝利の喚声を発した。後輪だけでしばらく乗りまわしたあと、逆立ちの姿勢をとり、走りながら前輪をたくみに取りはずすと、それを舞台裏にほうりこみ、そのあとはペダルを両手でまわしながら車輪ひとつで舞台の上を走りつづけた。
(水野忠夫訳)


みごとな自転車技術と華やかな演技である。思わず拍手してしまいそうになる。ただ残念なことに、演じているのはヴォランドでもその手下たちでもない。このあと舞台には、主役のヴォランドたちが登場して黒魔術を披露する予定になっているのであり、この自転車乗りたちはただの前座という役回りにすぎないのである。ああ、ぜひともヴォランドたちに自転車を乗り回してほしかった!そう思うのはわたしだけでは…、いやわたしだけかなぁ。



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