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420. シュトルム 林檎の熟するとき (フルーツ小説百選)

「林檎の熟するとき」(1856)は、読み込む必要がない。感じ取る必要がない。ただ文章を読み続けていると、いつのまにかこころの中にはいってくる。心に響いてくる。少し、笑わせてくれる。そんな作品である。・・・シュトルム、39歳の作品。邦訳は、岩波文庫版の短編集『みずうみ』に所収。

夜もふけていた。庭の板塀に沿うて並んでいる菩提樹のうしろから、いましも月が差し昇ったところである。月の光は果樹の梢をとおして、向うの家の裏壁に差し、それから、下の、石だたみの狭い中庭のところまで落ちている。中庭は、格子垣で庭から仕切られているのである。低い窓にかかっている白いカーテンが、いっぱいに月の光を浴びている。ときどき小さな手が伸びて、そっとカーテンを引きあける気配である。一度なぞは、少女の姿が窓しきいに寄りかかりさえした。彼女は、白いネッカチーフをあごの下で結んでいて、女持ちの小さな時計を月光にあてて見ている。指針(はり)の動きをじっと見ているらしい。そとの教会の塔から、ちょうど四十五分の時が打った。
(関泰祐訳)


引用したのは、作品冒頭の一節。この月の光の美しいこと!
わたしはこの”出だし”が大好きである。古めかしい訳文もこの情景にはぴったりだと思うのだが、どうか。
・・・そんな感想はともかく、ここから美しくも可笑しな物語は進行する。
登場するのは、ひとりの少女、ひとりの少年、もうひとりの男と、そして林檎、・・・仕掛けはこれきり、他には秋の夜が背景に広がるだけ。それだけの仕掛けでこの物語には充分である。舞台化しても美術さんも大道具さんも楽チンだろう。ほとんど手は掛らない。見る方も簡単。ストーリーは単純にして簡潔。なにしろ青春物語だから。一幕ですぐに終わる。
小説だと、ざっと6~7頁。読み込む必要がない。感じ取る必要がない。ただ文章を読み続けていると、いつのまにかこころの中にはいってくる。心に響いてくる。少し、笑わせてくれる。そんな作品である。



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