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422. ダンテ・ゲィブリエル・ロセッティ 林檎の谷 (フルーツ小説百選)

Monna Pomona 1864

rossettiウェヌス・ウェルティコルディア(心変わりを誘うヴィーナス)1864-68
(画像上「Monna Pomona(林檎の夫人)」1864、
下「Venus Verticordia(心変わりを誘うヴィーナス)」1864-68)


ロセッティ(1828-1882)の小説を読む。
「林檎の谷」、邦訳はちくま文庫版のアンソロジー『イギリス恐怖小説傑作選』(南條竹則編・訳)に所収。編者によれば、小説といっても、これは、後に物語詩に仕上げるために書いた散文というようなものらしい。

眠ればいろいろな夢を見る、と人は言うが、生まれてからこのかた、自分はただひとつの夢しか見ない。
谷間が見える。干上がった涸れ河の深い河床からつづく両側の斜面は、どちらも自生する林檎の樹に覆われている。その樹のなかでもいちばんの大樹の、大枝が分かれる叉のあたりに、黄金なす髪の美しい女が立って歌をうたっている。白い腕を片方枝に寄せかけ、もう片方の手は、つややかに光る紅い林檎を前に差し出している。その姿はちょうど、誰か斜面を降りて来る者に林檎を手渡そうとしているかのようだ。女の足元から下へは、降りてゆけばゆくほど樹々が鬱蒼ともつれ合い、谷底の深い大穴のうえに両側から枝を差し交わしている。そしてその穴の中は、男の骸でいっぱいなのだ。
(南條竹則編・訳)


短い作品である。しかしなかなか読み進めることができない。雑念がいっぱいに広がるからである。作中で描かれる女、この林檎を差し出す女は、もちろん魔女(siren)である。あまり出会いたくはないが、さきほどからその姿が、目の先にちらちらするような気がして読書に集中できない。窓からのぞく庭先の樹の枝分かれのところが影になっていて、それが女の手のような形に見えてきて仕方がない。それから思い出すのは、ロセッティの絵だ。彼が絵の中で描いてきた女性はどれも、優しくて美しい。優しくて美しくてそして妖しい。たぶん魔女である。手には林檎を持っている。こちらを向いている。なにか歌っている。唇が光っている。林檎を受け取ってはだめだ。齧ると眩暈がしてそして・・・。そこで夢から覚めればいいのだがどうも自信がない。そんな心配ばかりで読書が進まないのである。



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