425. ジェフリー・フォード 白い果実 (フルーツ小説百選)

「白い果実」(1997)、 ”腰巻”には『世界幻想文学大賞受賞作』という惹句が見える。だが、それだけではどうも気が進まない。腰巻にはさらに『山尾悠子の翻訳でおくる!!』という文言が加えられている。   いやはやこれで決まりかな。(自転車で図書館へ来たのであまり大きな本は借りたくなかったのだが) 結局、”山尾悠子訳”というところに惹かれて読んでしまったのである。

立ち去ろうとする亭主を私は呼び止めた。「盗まれた果実について、お前が知っていることを話してくれ。この世の楽園で実ったものだと言われているそうだな?」
「もうずいぶん昔に鉱夫連中がそれを見つけた時、兄貴もそのなかにおったです」マンタキスは血の巡りの悪そうな間延びした喋りかたで言った。「その果実(くだもの)は一点の染みもなく真っ白で、食べ頃の熟れた梨みたいに、誰もがかぶりつきたくなるほど美味そうだったそうで」喋る度に黄色い乱杭歯がのぞいた。「ガーランド司祭さまが、これは食べてはならぬものだと申されたですよ。食べれば不死身になる、それは神のご意思に反することだ、と」
「ほう。で、お前もその戯言に賛同するのか?」私は尋ねた。
   
「それを信じているのか?」
「儂は何でも、閣下の信じなさることを信じますで」マンタキスは後退りしてこそこそと部屋から出ていった」
(山尾悠子、金原瑞人、谷垣 暁美・訳)


先に読んだ「放浪者メルモス」がゴシック小説の源だとすれば、こちらは同じゴシックロマンスだとしてもずいぶん遠くまで来たものだ。神秘、幻想、怪奇、宿命と中心となるモチーフは同じなのに、なぜにここまで調子も味わいも異なるのか。今やゴシックも、極北の地を外れ、世界の中心で語られる物語に成り上がったのか。そりゃまあ200年も経つんだもの当り前?
いやでもしかし、「白い果実」、物語は楽しく、山尾さんの手が入った訳文もなかなかのものである。ただ、これが三部作の第一部だとして、残る二冊をすぐにでも読み継ぎたくなったかというとそうでもない、というのが肝心。以上、報告します。 



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