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429.夏目漱石 夢十夜 (フルーツ小説百選)

「夢十夜」(1908)は、ひとつひとつのはなしがとても短いのがいい。
疲れないから年長さん向きである。
不思議で奇妙なはなしであるので、年少さんにもいいかもしれない。
しかし、なんど読んでも、漱石はなんて奇妙な物語を書いたのだろう。

 庄太郎が女に攫われてから七日目の晩にふらりと帰って来て、急に熱が出てどっと、床に就いていると云って健さんが知らせに来た。
 庄太郎は町内一の好男子で、至極善良な正直者である。ただ一つの道楽がある。パナマの帽子を被ってを、夕方になると水菓子屋の店先へ腰をかけて、往来の女の顔を眺めている。そうしてしきりに感心している。そのほかにはこれと云うほどの特色もない。
 あまり女が通らない時は、往来を見ないで水菓子を見ている。水菓子にはいろいろある。水蜜桃や、林檎や、枇杷や、バナナを奇麗に籠に盛って、すぐ見舞物に持って行けるように二列に並べてある。庄太郎はこの籠を見ては奇麗だと云っている。商売をするなら水菓子屋に限ると云っている。そのくせ自分はパナマの帽子を被ってぶらぶら遊んでいる。
 この色がいいと云って、夏蜜柑などを品評する事もある。けれども、かつて銭をを出して水菓子を買った事がない。ただでは無論食わない。色ばかり賞めている。
(第十夜、冒頭)


第十夜も充分におかしなはなしである。
パナマ帽を被って水菓子屋の店先を女性が通って行くのを眺めるなどと洒落ていたら、或る日、とんでもないめにあってしまう。女性ばかり見てるんじゃねえとか、女性に 誘われてついていくんじゃないよとか、たぶんそんな話ではないはずだ。豚に舐められるというのも単純なメタファーではないはずだ。ではなんなのかといわれる と困るのだが。
たぶん、たぶんだけど、パナマ帽など被るんじゃなかったなと、そんな話ではないか。あんたもパナマ帽なんか欲しがるんじゃないよと、そんなはなし。



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