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434. いっそ桃をたべてみようか?

とある現代アメリカ小説を読んでいたら、こんな一節にめぐりあった。
"いっそ桃をたべてみようか?"
なにかこころに響くものがある。
出典をたどれば、T.S.エリオットの初期詩篇の一節だという。"荒地" のエリオットである。そういえば、"四月は残酷な季節" と書いたのは、萩尾望都ではなくてエリオットの方だったか。

さあ行こう、君と僕と、
夕暮が空いちめん、手術台で
エーテルを嗅がされた患者のようにのびひろがるとき、
なかばさびれた街をとおってゆこう、
(中略)

・・・・・
いやいや! 僕はハムレットじゃないし、そんな柄でもない、
主君の行列のにぎやかし、一つ二つの場面にとびだし
王子への忠言に一役買ってでる、
おつきの貴族にすぎないのだ、ほんとのところ、手軽な道具で、
へりくだり、お役に立てば喜び、
こすっからく、用心深い、おまけにこせこせして、
大言壮語するが、少しばかり頭が鈍く、
ときには、ほとんど馬鹿げていて  
ときには、ほとんど道化者だ。

僕は年をとる・・・・・年をとる・・・・・
僕はズボンのすそをまき上げて穿こう。

髪をうしろで分けてみようか? いっそ桃をたべてみようか?
僕は白いフランネルのズボンを穿き、海岸を散歩してみよう。
僕は人魚たちがたがいに歌いあっているのを聞いた。
・・・・・

(「J・アルフレッド・プルーフロックの恋歌」(1911)、鮎川信夫訳)



この100年前に書かれた言葉が、今も鋭いエッジを残していることに驚く。
しかし"恋歌"というのは名ばかりのタイトルであって、これは"君と僕"とのはざまで発せられた嘆きの声だととらえればいいのらしい。
では、なぜ嘆いているのか?
それはもちろん "荒地" に向けて、行かなければならないからである。
   さあ行こう、君と僕と。気乗りはしないけれど。


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