443. レイ・ブラッドベリ いちご色の窓 (フルーツ小説百選)

「いちご色の窓」(1954)は、短編集『メランコリーの妙薬』(1959)に収録の一篇。
火星に入植したとある家族の物語である。父親は、強烈なホームシックにとらわれる家族たちを懸命に引き留めようとするのだが、彼自身もまた幸福だった地球時代の記憶を夢のなかでたどっている。オハイオに残してきた”古き良き我が家”を思い出している。

夢のなかで、彼はドアを閉めていた  いちご色の窓と、レモン色の窓と、白い雪の色をした窓と、田舎の流れの澄んだ水のような色をした窓のはまった玄関扉を。フルーツ・ワインとゼラチンと冷たい氷の色をした大きな一枚のガラスのまわりに、四角く二ダースほどのガラスがならんでいた。子供の彼を、父親が抱き上げているのだった。 「見てごらん!」緑色のガラスを通して見ると、世界はエメラルド色、苔の色、真夏の薄荷の葉の色。 「見てごらん!」薄紫色のガラスは、通行人をみんな葡萄の色に見せていた。そして、いちご色のガラスは、いつも町をバラ色の暖かさで包み、世界を朝焼けのピンクに染め、芝生をペルシャ絨緞市のように見せていた。最もすてきないちご色の窓は、人々の蒼白い顔に紅をさし、冷たい雨を暖め、吹きすさぶ二月の雪に火をつけた。
(吉田誠一訳)


引用したのは冒頭部の一節である。
これだけを読むと、あまりにロマンティックで感傷的にすぎると、そんなふうに感じてしまうかもしれない。たぶんその通りだと思う。しかし、若きブラッドベリの極めてエモーショナルな書きっぷりは手に負えないようで、実はそうでもない。すぐに癖になって、なくてはならぬものになる。カナダ土産のメープルシロップクッキーの味わいと同じようなもので、とんでもない甘さに驚いてしまうが、すぐにやみつきになって食べつづけずにはいられなくなる。正月くらいいいよねえ、甘いものを食べるのも。そんなふうに思ってしまうのである。



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