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445. チェスタートン 青玉の十字架 (フルーツ小説百選)

菜蟲譜2
(伊藤若冲「菜蟲譜(部分)」、1790)

・・・なぜ"若冲"か? というと、チェスタートンの作品のなかに"青物屋"が登場するのを発見したからである。ご存じのように、若冲は京都の青物問屋の主人であった。「菜蟲譜」のような、フルーツ満載の作品があってしかるべきというところか。

探偵は立ち上って、帽子をかぶり、ステッキを握りしめた。(中略)
その店は繁昌しているらしい八百屋兼果物屋で、大道に並べられた品物の上には、果物の名と売値を記した札とがたくさん立ててあった。その中で、密柑(みかん)と栗の二つの山が一番人目につきやすかったが、その栗の山には、青いチョークで達筆に『最良タンジールス産密柑二個一ペニイ』という札がさしてあった。密柑の方には『最上ブラジル産栗一合四ペンス』と書いてあった。ヴァランタン氏はこの二つの札をじっと見据えた。そして、さっきも可笑しなことに出合ったばかりだのに、またすぐここでこんなことに出合ったことを意味ありげに考えた。彼は仏頂面をして表の往還をながめている赤ら顔の主人公に、そのことを注意した。が、亭主は一言も言わずに、ぶっきらぼうにその札を置きかえた。探偵はステッキに倚りかかりながら、しきりに品物を見廻していたが、最後にこう言った。
「もしもし、まったく失礼な申し分ですが、実験心理学上観念の聯合という事から、ちょっとお訊ねしたいことがあるんです」
赤ら顔の亭主は、恐い顔をしてヴァランタンを見つめた。が彼はステッキを振り廻しながら愉快げにつづけた。
「ところで、御主人、日曜にロンドン見物に来た田舎者の帽子じゃああるまいし、青物屋の正札が入れ違ってるなあ、一体どうした訳なんです? でなけりゃ、私にもはっきりしている訳ではないが、この密柑と栗の関係は、何か二人連れの坊さん、大坊主に小坊主の関係と神秘的な関係でもあるんですかな?」
商人の眼玉は、蝸牛(なめくじ)の眼玉のように飛び出した。彼はまったく、この見知らぬ男に今にも飛びかかりそうに見えた。が、遂に怒りながら吃り出した。「お前がどんな関係があるのか知らないが、もし知り合いの間なら、言ってくれ、うちの林檎をもう一ぺんひっくりかえすような事があれば、坊主であろうと何であろうと、あたまをたたき割ってやるからって」
(直木三十五訳)


「青玉の十字架」(1910)は、ブラウン神父シリーズの記念すべき第一作である。
物語には、神父はもちろん、ヴァランタンもフランボーもちゃあんと登場し、各々の役割をきちんと果たしてくれる。すなわち、警部は追いかけ、怪盗は盗み、神父は美味しい所をいただく、というわけである。第一作にして、既に、お愉しみの原型がすっかり出来上がっていたというわけだ。
ところが!、である。まさか、このすぐあとの作品で、三人の登場人物の役割分担が根底から覆されることになるとは、誰も予想していなかったと思うのだが、どうだろうか。驚くべきかな、である。そんなバカな、である。



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