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465. 舞城王太郎 私はあなたの瞳の林檎 (フルーツ小説百選)

舞城

「私はあなたの瞳の林檎」は、舞城王太郎のジュンブンガク路線の一篇、『群像』2012年9月号に掲載された中篇小説である。
しかしまあ、この路線に進んでからの舞城クンの作品は、同じ作家の手によるものかどうかと疑いたくもなるような調子で、「世界は密室でできている」や「ディスコ探偵水曜日」のようなノヴェルス時代の作品を愛してきたファンとしては、なんとも受け止め方のむずかしいこと。あの疾走感あふれる物語を読んできたものからすれば、こちらは同じ作家が書いたにしてもたぶん左手で書いた作品ではないかと、そんな想像をしてみたくなるってもの。いつもは右手で書いているとすればの話だけど。

中学校の三年のときだったが、英語の時間の雑談で「You Are The Apple of My Eye」ってイディオムの意味が《あなたのことは目に入れても痛くないほど愛してる/大事だ》だと教えてもらったとき、皆はリンゴがどうしてそんな意味を持つのか判らなくて混乱していたようだったけど、僕がそうじゃなかったのは、隣のクラスにいる鹿野林檎のことがもうずっと好きでその慣用表現にぴったりだったからだ。クスクスと笑っている奴がいたのは、僕がそれを公言していて最初からからかいの対象だったからで、もう馴れていたので全然気にはならなかった。その授業が終わってから「お、戸ヶ崎直樹の瞳のアップル」と阿呆の高村聡がからかったとき林檎が平気だったのも、同じく僕のことで皆にからかわれることに馴れてるからで、でも僕はやっぱり申し訳なく思うし高村つまらんこと言うなよな、ふうくだらない、とげんなりする。
(「私はあなたの瞳の林檎」、冒頭)


誤解されませんように。でもわたしは、この小説が好きなのである。
これはたぶん「逞しいネオ青春小説」を書こうとして、どういうわけか「優しい家族小説」のようなものになってしまったというのが、正しい読み方ではないのだろうかと、わたしは思っちゃったりするのである。そりゃあまあ、舞城クンだっていつもいつも筆圧たっぷりの力作ばかり書いちゃあいられないのだろうし。

それでも舞城クンは何を書いてもどんなふうに書こうとも、まっすぐにソレを見つめている、対峙している。ソレについて書きつづけてぶん殴ってその向こう側へ行こうとしている。その姿勢の正しさを指してきっとセイシュン小説というのだろう。わたしはこの作家が好きなのである。




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