473. オラシオ・キローガ ある人夫
キローガ(1878-1937は、ウルグアイ生まれの作家。
後にアルゼンチンに移り、主に、ミシオネス州という奥地の密林地帯を舞台に小説を書いた。物語には、毒蛇やネズミや蜜蜂や怪鳥や幽霊やヴァンパイアなどが登場し、これら前近代的な生き物や風習が残る土地で、すこぶる近代的な小説を書いた。また人間の死について繰り返し書き続け、後に"死の作家"などと呼ばれたりした。
「ある人夫(ぺオン)」(1918)、邦訳は国書刊行会のキローガ短編集成『野生の蜜』に所収。
この作品でも、一人の男の死の物語が綴られている。
しかし、読後に浮かび上がってくるのは、同時に描かれていた彼の鮮やかな生の軌跡の方である。だとしたら、キローガが繰り返し描いた"死の物語"とは何だったのか?


後にアルゼンチンに移り、主に、ミシオネス州という奥地の密林地帯を舞台に小説を書いた。物語には、毒蛇やネズミや蜜蜂や怪鳥や幽霊やヴァンパイアなどが登場し、これら前近代的な生き物や風習が残る土地で、すこぶる近代的な小説を書いた。また人間の死について繰り返し書き続け、後に"死の作家"などと呼ばれたりした。
ミシオネスでのある日の午後、ちょうど私が昼食を終えたとき、表門の鈴が鳴った。外に出てみると、片手に帽子を持ち、もう片方の手にスーツケースを下げた、若い男が立っていた。
気温は軽く四十度に達していて、訪問者の縮れ毛の上では、六十度にも感じられるのではないかと思われた。しかし、その若者には暑さに悩まされた様子がまったくなかった。門内に招き入れると、彼は直径五メートルあるマンダリンオレンジの樹冠を、物珍しそうに眺めながら、微笑を浮かべて歩いてきた。ついでに言っておくと、そのオレンジの木は、土地の人間にとって自慢の種であり、私自身の誇りでもあった。
(「ある人夫」冒頭、甕由己夫訳)
「ある人夫(ぺオン)」(1918)、邦訳は国書刊行会のキローガ短編集成『野生の蜜』に所収。
この作品でも、一人の男の死の物語が綴られている。
しかし、読後に浮かび上がってくるのは、同時に描かれていた彼の鮮やかな生の軌跡の方である。だとしたら、キローガが繰り返し描いた"死の物語"とは何だったのか?


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