480. ジョナサン・キャロル フィドルヘッド氏 (フルーツ小説百選)
「フィドルヘッド氏」は、キャロルの第一短編集『パニックの手』(1995)に所収。
登場するのは、わたし(ジュリエット)、40歳になったばかりの女性。離婚して今は独り者。
その彼女に友人が誕生日のプレゼントをくれた。金細工のイヤリングである。友人の手作りの品だということだったが、ひょんなことから実際には"フィドルヘッド氏"なる男が作ったのだということがわかる。
彼女は、その男に会った瞬間、好きになってしまう。
・・・いやあ、こんなふうに粗筋を書いているだけでわくわくする。キャロルは短編もいいなあ。
もちろんキャロルのことだから、ありふれた恋愛譚になるわけがない。
そもそも、フィドルヘッド氏というのは、友人の想像の産物=架空の友達だったはずが、こんなふうにリアルな存在として生きはじめるのだし。彼がプラムの種ばかり食べているのにはちゃあんとした理由があるのだし(誰かがプラムの実のほうを食べている)。それから、最後には、キャロルらしい冷ややかな結末が待っているのだし。
いやあ、キャロルは短編もいいなあと、しみじみ思う。


登場するのは、わたし(ジュリエット)、40歳になったばかりの女性。離婚して今は独り者。
その彼女に友人が誕生日のプレゼントをくれた。金細工のイヤリングである。友人の手作りの品だということだったが、ひょんなことから実際には"フィドルヘッド氏"なる男が作ったのだということがわかる。
彼女は、その男に会った瞬間、好きになってしまう。
・・・いやあ、こんなふうに粗筋を書いているだけでわくわくする。キャロルは短編もいいなあ。
フィドルヘッド氏は微笑んだ。察したのかもしれない。テーブルの上、ラジオのそばに黄色いお皿があり、何かが盛ってあった。相手の顔ばかりを見つめているのが恥ずかしく、お皿に眼の焦点を合わせると、プラムの種で一杯なのがわかった。
「好きかい? うまいよ」つややかな橙色/茶色の山から一個つまみ上げ、石のように堅いそれを口にすべりこませ、咬んだ。バキッと覇が折れたような音がしたが、フィドルヘッド氏は天使のような笑みを絶やさず、噛み砕き続けた。
(浅羽莢子訳)
もちろんキャロルのことだから、ありふれた恋愛譚になるわけがない。
そもそも、フィドルヘッド氏というのは、友人の想像の産物=架空の友達だったはずが、こんなふうにリアルな存在として生きはじめるのだし。彼がプラムの種ばかり食べているのにはちゃあんとした理由があるのだし(誰かがプラムの実のほうを食べている)。それから、最後には、キャロルらしい冷ややかな結末が待っているのだし。
いやあ、キャロルは短編もいいなあと、しみじみ思う。


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