493. フェルディナント・フォン・シーラッハ 棘 (フルーツ小説百選)

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「棘」を含む連作短篇集『犯罪』(2009)は、面白い構成になっている。
所収の11篇の全ての作品のどこかに、”リンゴ”という言葉が、ドレスの襟元の小さなアクセサリーのように、さりげなく添えられているのである。そしてそのあげく、本の最終ページにはこんな言葉が付せられている。・・『これはリンゴではない』

博物館の仕事はフェルトマイヤーを変えた。やがて、夜中になると、テレビの音が耐えられなくなった。半年間は消音モードでテレビを見た。それからスイッチを入れなくなった。そして、同じ階の向かいの部屋に入居した学生カップルにテレビを進呈した。次は絵の番だ。家には数枚の複製絵画があった。『リンゴとナプキン』(セザンヌ)、『ひまわり』(ゴッホ)、『ヴァッツマン山』(フリードリヒ)。いつしか色にも耐えられなくなり、絵を壁からはずし、ゴミ箱に捨てた。
(酒寄進一訳)


『犯罪』は、刑事弁護士である作家が、現実の事件に着想を得て、異様な罪を犯した人間たちを描きあげた作品集である。
「棘」は、ミュージアムの警備員の男が単調な仕事の繰り返しの中で追い込まれていく姿を描く。物音、サイズ、数、そして時間、色と、耐えられない対象が広がって行き、最後に突き当たったのが彫刻の『棘を抜く少年』であった。



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