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497. ヴァーノン・リー 聖エウダイモンとオレンジの樹 (フルーツ小説百選)

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ヴァーノン・リー(1856-1935)は、多くのエッセイや批評文の他に、少数の小説を遺した。邦訳で読めるものは数少ないが、実際に手にすることが出来たとすれば、読み始めた途端に、何という幸運に恵まれた日なんだろうと思うに違いない。そんな、とびきりの作品であると思うのである。
・・・「聖エウダイモンとオレンジの樹」(1907)、邦訳は、ちくま文庫版のアンソロジー『短篇小説日和 英国異色傑作選』に所収。

これは聖エウダイモンのオレンジの樹の物語である。ヴィコ・ピサノの修道士ドミニク・カヴァルカが著した『聖徒伝』に載っている話ではないし、ましてヤコブス・デ・ヴォラギネが編纂した『聖人伝集』にあるはずもない。そして恐らくは他のどのような聖人伝にも載っているということもないだろう。私はこの話を、あの奇跡の地で、常に花の絶えることのない立会人であるオレンジの樹の前で知った。
カエリウスの丘とアヴェンティヌスの丘の果樹園が四方に広がり、葦材の格子が若い葡萄の蔓を支えていた。さらに遠方を見渡せば、大きな迫持(アーチ)や廃墟らしきものが見えるはずだ。コロセウム、大円形競技場、ネロの宮殿といったものが、聖ペテロ大聖堂や青いサビニ山脈と一緒に遙か彼方に見える。その地に小さな教会があった。(中略)
オレンジの樹はここにある。葡萄酒や野菜に花弁を落としながら立つ姿は、思いもよらないほどの歳を重ねた威厳を具えている。と云っても、幹を見ていると思っているものは実は生き残った枝の一本に過ぎず、本当の幹は庭の地面よりも下に隠れてしまっているのだ。ここで、私はその伝説を聞いた。
(西崎憲訳)


展開されるのは、時代を越えて繰り返されてきた”ヴィーナス像と指輪”の物語である。メリメや、アンソニー・バージェスや、ティム・バートンの例を思い出すのはもちろん勝手であるが、驚くのはそんな物語の原型があるにもかかわらず、ヴァーノン・リーの物語がとんでもなく独特なことである。いやいやそこには独特なだけではなく、とびきりの美しさと可笑しさまである。



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