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810. E・T・A・ホフマン G町のジェズイット教会


ホフマン


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岩波文庫版の『ホフマン短編集』(全6篇を収録)を開くと、まず「クレスペル顧問官」(1819)が現われ、そして次に「G町のジェズイット教会」(1816)が出てくる。二作とも、みごとな芸術家小説なのである。
これはぜひとも二作品を合わせて読んでおきたい。前者は、音楽をテーマにしており、後者は、画家を描いた作品であるので、”画家小説百選”を掲げる当ブログの立場としては、後者だけを取り上げればいいようなものなのであるが、どうもそうはいかないという気がする。両者を合わせて読むことで、ホフマンの芸術家小説の面白みが初めてわかることになる、そんな気がするのである。

「あの画家はまったく変わった人です」
教授が話しはじめた。
「おとなしくて  善良で  よく仕事するし  誠実であって、この点は先にも申したとおりです。しかしいかんせん、頭が弱い。理性を欠いた人ですよ。さもなくてはたとえ罪を犯したことがあるにしても、人生におけるなにか一つの失敗だけでちゃんとした歴史画の画家からペンキ屋風情に身を落としたりしますまい」
教授の冷淡さにもまして「ペンキ屋」の一語に腹が立った。私は現在のベルトルトだって尊敬すべき芸術家であり、もっとあたたかい目で見てやっていいはずだと抗弁した。
「そう思いますか」
しばらく沈黙していたあと、ようやく教授は口をきった。
(池内紀訳)


同じ短編集には、あの名作、『砂男』(1815)が収録されている。だから言うわけではないが、先の芸術家小説の二篇には、幻想や怪奇の欠片もないので念の為。そんなものを期待して読むと待ちくたびれたままで終わってしまう。最後まで読んでも訪れるのは、主人公の死だけである。
いったい芸術家というのは、あらかじめ失われたものを追い求めて、結局は死の深い影のもとに消えていくものである、とそんなふうにホフマンは、途中美しい娘の姿をちらつかせながらも、そんなふうにホフマンは書きたかったのだろうか。
いやはや、芸術家小説は難しい。いつもホフマンの小説に登場する"美しい娘"の存在に眼を奪われてしまう身にとっては、余計に。




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