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812. ディック・フランシス 追込 (画家小説百選)

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「追込」(1976)には、主人公として画家が登場する。
とすれば、先のハモンド・イネスの作品に次いで、”なぜこの冒険小説の主人公は画家でなければならないのか?”という命題に再び取組むチャンスである。
しかし、そんな思いつきはあっというまに吹き飛ばされてしまった。この作品では、”贋作画”をめぐる物語が展開されるからである。なるほど、イネスの場合とは違って、ストーリー上の必然ってやつがあるわけだ。

土曜日に、仕事に倦み疲れて筆をおき、競馬に行った。
プランプトンの障害レースで、例によって、なめらかな馬体の動きにしだいに興奮が高まった。絵画は、あの美の神髄を描写することは絶対にできない。キャンバスにとらえられているあの一瞬は、つねに次善の姿である。
 私は、レースで馬に騎乗したくてならなかったが、それだけの経験も技術もなかったし、あえていえば、勇気もなかった。父はサセックスで競売業をやっていて、私は、ドナルドと同じように、中規模事業主の家庭で育った。幼少の頃から、フィンドン周辺の丘陵地帯で馬が調教されるのを始終見ていて、六歳の頃から馬の絵を描き始めた。
(菊池光訳)


「追込」は、ディック・フランシスの”競馬シリーズ”の第15作である。
・・・未読の方の為に、あえて書き添えると、この”競馬シリーズ(全44作)”の作品は、競馬小説でも競馬ミステリでもなく、英国流冒険小説の本流を行く作品群だと思うのである。もちろん、冒険小説と言っても、戦う相手は”大自然”ではなく、人間である。だから、ハードボイルドの探偵小説に近いとも言える。

そして、もうひとつ書き加えておこうと思うのは、競馬シリーズの主人公は、騎手や調教師や馬主といった競馬サークルに属する人物とは限らないということである。むしろそれ以外のさまざまな職業の人物が登場してくることも多い。・・・俳優、教師、記者、作家、銀行員、探偵、映画監督、英国諜報部員、等々、極めて多彩な職業の男たちが登場する。ただし、仕事や年齢や立場が変わっても、彼らはすべて同一人格の持ち主である。英国流冒険小説の主人公にふさわしい正義と矜持と不撓不屈の精神の持ち主である。だから、はっきり言えば、職業なんて何でもよい。

・・・ディック・フランシスの小説では、主人公の職業なんて何でもよい。
とはいえ、「追込」の主人公の仕事は画家である。
画家を主人公とする立派な冒険小説がここには展開されている。
贋作画をめぐる物語なので、画家が探偵役となる必然性もある。何の文句があるものか。
文句があるとすれば、第45作が読めないことだけである。



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